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エッセイ

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私が思ったことをゆるく書き綴りました!
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石屋の息子

 我が家は古民家で、家の前には広く庭がある。コンクリートブロックで作られた曲がりくねった通路を挟んで、右手には菜園スペースが、左手には松の木と柿の木がある。柿の木は何もせずとも毎年、美味しい甘柿をたくさん実らせてくれるので、我が家のおやつになったり、手土産や物々交換の品になる。菜園スペースは今のところ、まだ幼い子供たちの遊び場となっていて、滑り台とトランポリンを置いている。

 息子が歩き出したの

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一等好きな食べ物

 チョコレート。マクドナルドのアップルパイとバーベキューソース。母の酢豚。マグロと海苔巻きとお寿司。フライドポテト。28年、変わらず好きな食べ物たちを思いのままに羅列してみた。

 それらを抜き去る形で、私の一等好きな食べ物に君臨したのが、ヤマザキのチップスターである。のり塩味もいいけれど、オーソドックスなうすしお味が不動の一位で、何も食べられなかった悪阻のときもチップスターのうすしお味なら食べら

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徒歩5分、韓国料理屋

 私がティーンエイジャーだった頃の数年、実家から徒歩5分のところにアットホームな韓国料理屋さんがあった。
 大学生の息子がいる韓国人のママが、ひとりで切り盛りしている店で、おめかししたトイプードルが看板犬として店内を闊歩していた。オレンジの裸電球の灯りが、店内を赤くオシャレに染めていて、当時、日本ではチャン・グンソクが大人気だったので、店内には彼のマッコリのCMのポスターがいくつか貼ってあった。

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年越したそば

 実家を出てから、年越しそばをちゃんと作ったり食べた経験がないと気づいた。そもそも、私が蕎麦を食べるのなんて、年越しそばの年に一度しかなくて、気づけば蕎麦をほぼ食べない族になってしまった。

 一応は28年という長い歳月をこの日本で過ごしてきたので、できそうな風習や文化ならば、是非やりたいという心持ちでいる。むしろ、やらなければという義務感にも似ている。
 どん兵衛だろうと冷凍だろうと、蕎麦を食べ

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メガネに憧れる

 小学校の低学年の頃、とても、いや、異様にメガネに憧れていた。メガネをかけている子たちが羨ましかったし、ショッピングモールでは、メガネ屋の前を故意に何度も通り過ぎたりした。

 私のメガネへの執着にも似た憧れは筋金入りで、母と100円ショップに行った際に、青いレンズのサングラスを懇願して買ってもらい、一時期、家ではそれをかけて生活していた。サングラスをかけたまま塗り絵をして、プリンセスのドレスを紫

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はすみちゃん

 近所に住むはすみちゃんは、お転婆娘というのを絵に描いたような活発な女の子だった。小学5年生にして、とても美人で垢抜けていて、スタイルも良く、それでいて突拍子のないことをやってのけたりするので、小学生ながらに私ははすみちゃんの友達であり、ファンでもあった。

 はすみちゃんと仲良くなったのは、11歳の頃で、その頃の女子ときたら、生意気で、ちょっぴり意地悪で、女々しくもなってきているのに、はすみちゃ

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ヴェポラッブ

この文章を書くまで、ずっとヴェポラップだと思っていた。

幼稚園に通う前の、四歳以前の記憶がほとんどない私にあるのは、タンバリンのジングルを噛んで歯が浮いたことと、風邪を引いたときに加湿器が焚かれた湿度の高いむっとした温かさの、空気のぬるい部屋で、髪が汗ばんだ頰に張りついて、手足も嫌な感じに湿っていて、怠さで朦朧としながら、母が塗ってくれたヴェポラッブのプラスチック瓶を薄暗い部屋で眺めていたことく

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同じ夢

幼い頃、高熱を出す度に見る夢があった。

パジャマ姿の私は懸命に走っていて、後方には大きな岩壁とマグマがあり、ごつごつとした巨大な丸い岩が、私を押し潰そうと転がってきている。前方は全体的に白い幸福な背景であり、青い屋根の小さな白い家があり、紫陽花の横で若くして亡くなった母方の祖母と幼稚園の制服とベレー帽姿の男の子が手を繋いで、私に手を振るか手招きしていて、夢の中で懸命に走る自分を幽体離脱している自

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記念日とかクリスマスとか

記念日とかクリスマスとか

世の中には記念日という、何てことのない日のくせに自分(たち)で特別な日に指定して、特別なことをするのを良しとする日がある。

結婚記念日、付き合った記念日、クリスマス、バレンタイン…もっと細かく記念日を指定しているカップルも居れば、記念日なんぞ気にしないというカップルも居るであろうが、私は記念日を推奨したい人である、と同時に、そんな‘’まやかし‘’に振り回されてたまるか!とも思っている。
※(記念

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私の住む島の味覚

私の住む島の味覚

私は3年前に愛媛の離島にひょんなことから移住した25歳だ。

島で唯一のスーパーで働きながら、楽しい島暮らしを送っているわけだけれど、今宵のお節句にてそういえば…と思う節があったので、ここに書き記してシェアしたいと思う。
共感やご意見があったら、お気軽にコメントを残して頂けると楽しい。

私の住む島では、とにかく砂糖がよく売れる。
働くスーパーでも時折、売り出し日に1キロの砂糖が安くなるが、そうな

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猛然と作る日

猛然と作る日

彼がいなかったことと、生理が終わったことと、短気な客と、冷食や菓子パン生活が祟ったのか、朝から視界に靄がかかっているようなどんよりとした苛立ちが、自分の中に立ち込めていた日。
左手の中指だけ爪が長いことが気になって、鋏で切ってしまうほど私の心は荒んでいた。

職場が自転車で30秒、家を出る20分前に起床する生活だからいいものの、これが満員電車で1時間半とかだったなら、意気地なしの私はめげていたと思

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明るくモヤモヤする(雑記)

明るくモヤモヤする(雑記)

※1度削除した記事ですが、思いのほか閲覧数が伸びていた記事だったため再投稿です。21/09/16 

昨日から生理になった。
2~3日のフライングは許せても、5日も前からやって来るのは反則だと思う。ここ数日、無性にお腹が空いたり、そろそろ来るなとは思っていたが、大抵20日ぴったりにやって来るので油断していた。
久しぶりに汚れたシーツを、適当に中性洗剤を混ぜた水と歯ブラシでこすってみたけれど、途中で

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私が心動かされた言葉③

私が心動かされた言葉③

(※投稿するのが遅くなったため、日付に時差があります。)

現在、21年の10月10日。もう少しで11日を迎えそうな、夜だけ秋めいてる今日この頃の深い夜である。
②の時点で、ノートは最後だと書いたはずなのだけれど、去年のノートも中身の整理をして、ごみ箱に放り投げたくなってしまった。パラパラと捲っただけで、その感情はもう今の私には古くて捨ててしまいたいのだ。

1年前の、もう古い過去の私は、今よりも

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美容脱毛をやめる話

美容脱毛をやめる話

※私個人の見解であり、クレームでも批判でもありません。

かれこれ7〜8年は美容脱毛サロンに通っている。と言っても、サボって通っていなかった時期も沢山あるのだが、10代の頃に始めた美容脱毛を、移住してからは月に1度のペースで通ってきた。

この美容脱毛がなかなか過酷な環境であり、毎回喜んで行きたいかと問われれば、お世辞にもそうとは言えない。
すっぽんぽんになり、冷たいジェルを塗布され機械をあてられ

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