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ベトナム起業日記: #55. 第一回ベトナム語レッスン

某月某日、日曜日

ケイの息子くんとのベトナム語のレッスンが始まった。
レッスンは毎週日曜日の夜8時半から。
Zoomでやろうかなと思っていたが先方からDiscordを使いたいという連絡が来たので、Discordのアカウントを作った。
ゲームをやらない僕はDiscordを今まで使う機会がなかったので始めてである。

時間が気て、恐る恐る使ったことのないDiscordを立ち上げると、ケイと息子くんがいた。

前日に僕が使っている本の最初の数ページをスキャンして送っておいたので、それを使って進める手はずである。

日本語の本であるが、最初は母音の発音と声調で、大きく母音のアルファベットなどが印刷してあるので、日本語で書かれた部分がわからなくても何を教えるページかは一目瞭然なので大丈夫であろう。

まずは声調をやることにした。ベトナム語には恐ろしいことに6つの声調がある。中国語をやったことがある人であれば、中国語には四声といって4つの声調があることを知っているであろう。ベトナム語はなんとそういうものが6つもあるのである。

a, á, à, ả, ã, ạ

この6つの声調を1つ1つ発音し、ケイの息子のケンくん(仮名)に言い直してもらうことにした。

私は中国語を勉強していたことがあるので、こちらには少し自信があった。
とくに、á, àは、中国語の第二声と第四声と同じである(と思っていた)。

中国語の第二声の上がる発音は”上げる”ことを意識するよりも、”最初を下げる”ことを意識するとうまく発音ができる。
第四声の下がる発音は”下げる”ことを意識するよりも、”最初を上げる”ことを意識するとうまく発音できる。
これは自分が何度も四声を直されて口ずさんでいるうちに発見したまさに”奥義”だと思っている。
「この奥義を一発繰り出してやるか」
と余裕をもって
「ア↓ー↑」
と発音すると、間髪入れずケンくんが直しを入れてきた。

「あれ、おかしいな、、」

もう一度

「á(アー)」

と発音する。

ケンくんがすかさず「No」と言ったあと「á(アー)」と発音する。

???、奥義が、通じないぞ、、一体これは、、

ケンくんの発音を聞くと、なんか、中国語よりも”さらに上がってる”気がする、伸びがあるというか、伸びていくというか、
実に違和感があるが無理やりもう少し上げていくと、ケンくんのOKがでた。

次にà
これは中国語の第四声にあたる。中国語の第四声の奥義は”下げる前にまず上げる”を意識し、高いところから入って下げるイメージだ。

「à(ア↑ー↓)」

奥義炸裂!

と思いきやすかさず、

「No、à(アー)」

とケンくんが直しをいれる。

これもか、、

何度か言い直してみて、ケンくんの反応具合を見ているとどうやら奥義、”まず上げる”がお気に召さないようだった。
上げようとしているのがバレている、というか”気持ち上げ”のつもりが「おい、なに上げてるのよ!」と思われていることが画面の向こうのケンくんの表情から読み取れた。
なんとなくこちらのほうがさっきよりもさらに自分がすごく間違っている気がする。
奥義である”まず上げる”を禁じ、これももっと伸ばすというか、長く下げる感じで発話したらやっとOKがでた。

あとで調べてみてわかったがベトナム語のà (重声というらしい)は中国語の第四声と対応しておらず、中国語の第四声はむしろこの後でてくるạ(落声)と近いらしい。

ケンくんが秒で違和感を感じてNoというのも当然なのであった。
その後、

は教科書に書いてあった「あ〜ぁ」のため息のような言い方、という通りに発話したら一発OKが出て、
ã
は中国語に存在しない非常にユニークな声朝で、喘ぎ声みたいな言い方なのだが、わかりやすく発話し易いのでOKがでた。
最後の
 ạ
これは、教科書には「アッ」のように非常に短く音を止めるとあるが、ケンくんの発音は全く別物で、アを少し伸ばしたあと急に音を消失させるような発音だった。
教科書のCDの発音とも全く違うので、ホーチミンとハノイで声の出し方が違うのかもしれない。

(後で中国語との対応表を調べていたときに第四声の”下げる”発音とこの ạが近い関係にあるらしいことが分かった。そういう意味ではケンくんの発音のほうが中国語第四声に近く、CDに収録されているおそらくハノイの人の発音だと思われるものは全く第四声とは違うものだった。)

何度もケンくんの発音を聞いていて、中国語の「遊ぶ」という意味のことば
玩(Wán)
を思い出した。これは声調的には”上がる”第二声なのだが、中国人の実際の発音を聞いていると、アが途中でふんわり消失するような言い方をしているのだ。これが言えるようになるのに昔かなり苦労した記憶があるが、
この「ふんわり消える」が今まで聞いた音のなかで一番 ạに近い。
自分で玩(Wán)を意識してạが入った参考単語のbạn(友達)を発音してみるとケンくんの顔の眉間のシワが少しゆるんだ気がした。
さらにケンくんの直しを注意深く聞くと、少し最後を下げさせようとしている熱意が伝わってくる。
玩(Wán)を意識してふんわり消失させながらも下げる、そんな言い方をしたらなんとかOKが出た。

実に奥深い6つの声調の鍛錬が終わった。
これは、CDがあっても独学では絶対習得は無理だったし、自分が思い込んでいた間違い(奥義)も矯正することはできなかったので、ネイティブスピーカーであるケンくんのレッスンを受けて良かった。

自らが中国語で習得した”奥義”が今回邪魔をすることになったものの、中国語で四声を経験していなければ、この6つの声調という壁の中にほんのり見える足がかりも見えなかったであろうし、そこに向かっていく勇気も持てなかったかもしれない。

ケンくんと、最後までDiscordにログインしてレッスンを見守っていたケイにお礼を言って、レッスンを終えた。

続く。

中国語の四声とベトナム語の六声の対応表

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