整う。(笑)
こんばんは、シャイニングわんらぶ水谷です。
僕はあんまりサウナが得意じゃない。
なので、サウナ好きの言う「整う」という言葉を「整う。(笑)」と正直心の中で馬鹿にしていた。
それでも銭湯や温泉は割合と好きな方なので、近所にあればたまにふらりと浸かりに行ったりはする。
大阪市内に引っ越してきて、最近になってそういえばこの辺の風呂って行ったことないなぁと思い、一番近くにあるお風呂屋さんに行くことにした。
その浴場はどうやら「温冷浴」というものを推してるらしい。
まずは冷水から浸かり、冷え切った身体を熱いお湯で温め直す。
これらを数回繰り返すことで、抜群の疲労回復と様々な健康的効果が得られるという。
そんな説明が書かれたプレートがあらゆる所に貼ってあり、僕は服を脱ぎながら「へぇー、まぁ僕には関係ないけどね」と思いながらいつもの様に入浴することにした。
けれども、身体を洗ってさぁ湯に浸かるかという所で、僕は軽く悲鳴を上げることになる。
なんとこの浴場の湯、死ぬほど熱いのである。
「正気か?今日たまたま湯の設定をミスっているのでは?」
と疑うが、周りの客はそんなこと意も介さずドボンと熱湯に飛び込んでいく。
僕はすかさず隣にまるで僕のような人間の救済の為にあるような「ぬるめの湯」と書かれた浴槽に逃げるように浸かった。
しかし、だ。
ぬるめの湯すら、家で入る熱めの風呂よりも少し熱い。
これはとんでもない地獄風呂に来てしまった、とその日はそのお風呂屋さんにいもり散らかす形で後にしてしまうのだった。
けれども後日。
浴室乾燥を使わなければ洗濯物が間に合わないというずぼらをかましてしまい、致し方なく件のお風呂屋さんで風呂を済ます他ない、と再び足を運ぶことにした。
罰ゲームよろしくと言わんばかりの熱湯はやはり健在で、仕方ないシャワーだけ浴びて帰ろうかと熱湯風呂に背を向けようとした時、浴槽の中に貼られたプレートが目に止まった。
「当温泉で温冷浴をせずに帰るということは、高級レストランでライスだけ食べてそれ以外は残して帰るようなものです」
……ほう??
随分な自信じゃないか。
こんな大阪市の端っこにある下町風情の、こじんまりした浴場があろう事が「高級ディナー」とは、笑わせてくれる。
面白いじゃないか。
そこまで言うなら貴殿の言う通りの方法で、温冷浴とやらを試して見てやろうじゃないか。
なんて考えで、僕は意を決して言われた通り温冷浴を実践する事にした。
温冷浴の手順は
水→湯→水の順番で一分ずつ、最低5セット行うこと。
やりすぎも良くないので、10回程度までで抑えるのも大事らしい。
僕はまずビビりながら水の浴槽に足をつけていた。
冷たすぎるし、外も寒かったし地獄の所業のようで心が折れそうだったが、水の浴槽はかなり狭く人が三人入るのが限界位で、僕がビビって居ると後ろから入りたそうな人が「はよ入れや」という目で僕を睨んでいた。
「す、すいませぇん」と思いながら覚悟を決めて水風呂に飛び込んだのだが、キンキンに冷えきった身体に水風呂は突き刺さるように冷たく、一分どころか三十秒ももたないのではと思いながら、我慢して震えていた。
一分たって上がった時には身体は確実に風邪をひくと思うくらいの冷たさで、一刻も早く温まりたいと、罰ゲームのような温度ということも忘れて熱湯風呂に飛び込んだ。
するとどうだろう。
熱湯風呂がちょうどいいくらいに温かいのだ。
(あれ……気持ちいいぞ??)
確かに元の温度があつすぎるため、皮膚は少しだけピリつくような感覚があるが、急激に体の温度が上昇し一気に逆上せて行く感覚があった。
そして、一分というのもミソだ。
それ以上浸かっていると、身体の表面を覆っている冷気が取れて結局熱く感じてしまう。
そうなる前に水風呂で逆上せた体をリセットする。
気付けば僕は夢中でそれを繰り返していた。
あっという間に五往復がすんで、後ろ髪を引かれる用に最後の水風呂に浸かる。
水で締めることで、湯冷めを防止するためである。
風呂から上がって着替えている最中、既に僕は尋常ではない疲労回復を実感していた。
「こ、これが……整う……か」
とてつもない爽快感の中で僕は帰路につき、そのまま家にかえってスキンケアをして、幸せいっぱいの中でよだれを垂らしながら快眠を貪った。
次の日大寝坊をした。
そんなわけで、僕は最近自分が何かを乗りきったり疲れたりした時は温冷浴に行く。
整うという言葉は素晴らしい言葉である。
皆さんも、是非。