私と野良猫物語 ①
私は20年以上ずっと犬派でした。
だって、猫は懐かないから可愛くない。父方のばぁちゃんが野良猫にエサをあげてて、遊びに行った時にコタツに入ってた。わからなくてコタツに足を入れたら引っかかれた。叩いてやろうとおもったけど逃げられた。やっぱりかわいくない。
あとは怖くて不気味なイメージ。このイメージは『世にも奇妙な物語』でついたイメージがほぼ。あと母が猫は「猫は気持ち悪い」と言っていた。呪われるとか死んだら化けてでつくるとか、そんな話を聞かされていた。
子供の頃に将来犬を飼いたいなぁとか想像していたけど、猫を飼う想像なんてしたこと無かった。そもそも撫でる想像もできてなかった。
そんな我が家になんで保護猫が10匹以上いるのか、初めて猫を拾った時の(思い出)話をしたいと思う。
たしか当時24歳。中学の時から仲良くしてた自分の中では親友と思った友人とささいな事がきっかけでケンカになり疎遠になった。
友人に素直にあやまれば良かったんだろうけど、怖くて連絡が取れなかった。
その日は、前職の後輩に話相手になってもらっていた。
彼女の家は海のすぐ近くで、よく防波堤に座って話したりお酒のんだりしていた。
話ながらつまめるものをスーパーで買った。何を買ったか全部覚えてないけどプリンアラモードを買ったのは覚えている。
彼女の家から海までの100歩にもみたない道のりで一匹の子猫に出会った。
3~4か月くらい、もうすっかり猫のシルエットになっている子猫。尻尾はピンとたっていた。
柄は白とグレーのトラ猫。足とお腹は白い。通称鯖白。
ゴミ置き場に残ってた網で遊んでいて、まったく警戒心がない感じ。その猫に声をかけたりスーパーの袋で音を出したりとじゃれた。
後輩に『この猫、人懐っこい!可愛い』というと『そう、最近みかけるんだ。犬派じゃなかったけ?』とびっくりされた。
確かに犬派だけど、ほんとに人懐こくて初めてあんなに猫と遊んだかも。と当時感動していた。
防波堤まできて、座ってお互いの日々の悩みやらうっぷんを晴らした。私は友人とのケンカの話。彼女は付き合ってた彼氏と実は別れてたって話。
『お互いきっと違う良い出会いがあるだろう』と、話をまとめようとしていたとき、さっきの子猫が私たちの所にやってきた。
猫は人に近寄らないイメージだったから感動した。
『さっきのネコがきたよ!どうしよう可愛い!』と一人で騒いでいた。
子猫が私のプリンアラモードを気にしていたから、クリームを舐めさせたら舐めた。なんだか嬉しかった。でも、あとはどう扱っていいかわからなかったから適当に追い払った。そしたら居なくなった。
22時近くなり、自宅に帰ろうと自分の車に向かった。
やはりゴミ置き場附近に子猫が居た。
ゴミ箱を通り過ぎると子猫は後をついてきた。今まで生きてきて、こんなに猫になつかれたことは無かったので、とても嬉しくてオカシナテンションになっていた。
『この子猫ついてくる!えぇどうしよう可愛い!連れて帰っちゃおうかな。』
『え?連れて帰るの?』
『だって可愛いもん。』
『本当に連れて帰るの?』
後輩は、ビックリというか冷静に私をたしなめていた。
『わかった、車に乗せて逃げたらあきらめる、逃げなかったら連れて帰る』
そう決めて、子猫を抱っこして運転席に乗りエンジンをかけた、子猫が逃げやすいように運転席のドアは開けたままにした。
正直すぐ逃げると思ったが、膝の上でおとなしくまるまって私が撫でてあげるとゴロゴロし始めた。
猫がゴロゴロする瞬間を初めて体感した。ぼんやりと猫はゴロゴロ鳴くというのは知っていたけど、体感するとこちらが幸せな気持ちになる事に気づいた。猫のゴロゴロは人を幸せにする魔法だと思う。
『kちゃん(後輩の名前)子猫逃げないよ!どうしよう可愛い。』
すっかり私はこの子猫の虜になっていた。
『ほんとに連れて帰るの?お母さんビックリするんじゃないの?』
彼女は本気で心配して少し慌てていた。
そうだ!母に連絡しないと!
運転席のドアを開けたまま、子猫を抱っこしたまま母に電話した。
『おかあに電話する!......あ、もしもしママ?今私子猫拾ったの。........連れて帰ろうかと思って!......私世話するよ。......だって逃げないんだもん!今ね、私の膝の上にいるの.......んじゃね。なんか準備してて!』
電話越しの母の反応は
『何で猫なんて拾ってんだ。』『馬鹿じゃないのか。だれが世話するの。』『ママは世話しないからね、お前に世話何てできないんだから置いてきな』『死んだ時どうするの!!』
まぁ予想通り。
『て、事だから子猫逃げないから連れて帰るわ。暴れないうちに帰るね。』
『本当に連れて帰るんだ(笑)。気を付けてね。』
彼女は呆れてる感じだった。
まぁそりゃそうだよね。(笑)
子猫がビックリしないようにゆっくり運転席のドアを閉めて、車をゆっくり走りださせた。
猫はウトウトしていて、本当に凄く可愛かった。
細い道から、国道に出て少ししたら急に猫の目つきが変わり活動的になった。運転してるのに上半身登ってくるし、顔はたたいてくるし、膝の上で自分のしっぽで遊ぶし、たしなめようと手を出せばひっかいてくるし
えぇ~!さっきの子猫と性格変わってると思うんですけど!とぶつぶつ言っていた。
彼女の家から車で約30分。自宅について勝手口をあけると(私は出入りは玄関でなく勝手口)母が仁王立ちして待っていた。
『猫なんて拾ってきてどうすんだ!』
と、怒り口調。
『見てみて!可愛いでしょ!!』
子猫を母に見せても、母は渋い顔をしていた。
『ふん、猫なんて可愛くねぇ。』と、猫を見ようともしなかったが、ぶつぶつ言いながらも、タオルをぬらして猫の足をふいてくれた。
『なんか準備してくれた?』
母は動物が嫌いと言っていた。猫は気持ち悪いと言っていた。だからこの子猫も母には歓迎されないかなと思っていて、あまり期待してなかったんだけど。
母は口でブツブツ言いながらも、段ボールをみつけタオルをひき子猫の部屋を作ってくれていた。
言葉と行動に違いに凄くびっくりしたことと、予想以上の部屋の出来に感動したのを覚えてる。
私の母は、ホントに不器用なんだなとも思った。