民営化に揺れる水行政1990年~いくら使っても水道料金は同じ~
ブックオフの100円コーナーで見つけた本のご紹介。
「英国の国土政策」サッチャーリズム最後の標的(ラストターゲット)
1990年発売
著者:赤井裕司(発売当時は建設省 住宅局 住宅政策課 課長補佐)
住宅新報社
著者は1987年~1990年にロンドンの日本大使館へ一等書記官として出向していました。当時のイギリスはサッチャリズムでおなじみのサッチャー首相。在任期間は1979~90年ですから政権の最終期頃にあたります。
コチラの本のチャプター4「民営化に揺れる水行政」と題して、水道・下水道事業の民営化が始まると解説しています。そして興味深い箇所があったので引用いたします。
いくら使っても同じ
”英国では、各家庭に水道使用量のメーターがないというと驚かれる方も多いと思います。水道料金は、家の大きさと蛇口の数、水道管の径などであらかじめ固定資産税のように決まっており、徴収も固定資産税(レイツ)に付加して一緒に請求されます。つまり、使っても使わなくても払うものは同じなわけです。”
映画「最後の一滴」(2018年公開)でアイルランドには水道メーターが無いという話が出てきて、メーターがあるのが当たり前な日本に住んでいるとホントかいな?どうやって料金を徴収してるんだろう?と謎だったのですが、この書籍で少し謎が解けました。
1980年代当時のイギリスでは、お役所仕事的な水道事業を民営化すれば水の無駄遣いも減るだろう、メーターの設置も促せるだろうとの思惑があったのでしょう。
このチャプターで著者の赤井さんは「英国の水道民営化の荒治療も日本にとって大いに参考となる壮大な実験になることは疑いありません」と結んでいますが、30年の壮大な実験を行った結果、現在の英国の民意はこのようになっています↓
イギリス国民の83%が「水道の再公有化」に賛成の衝撃
日本政府、各自治体長さんにはイギリスでの実験結果をしっかり確認して、今後の水行政を考えていただければと思います。
文:(は)