スキルシェアってどうすればいい?(理論編)
こんにちは、ITEGパラレルキャリアマガジン管理人水野です。
第二回は、スキルシェアについて考えてみましょう。
記事を書いてくれたのは、株式会社ふくおかフィナンシャルグループの橋本智之さんです。
水野
橋本さん、よろしくお願いします。
橋本
こちらこそ、よろしくおねがいします。1年間のITEGでの議論を経て、副業するという意義と、それを成功させるためのポイントをいろいろ考えることができました。
(執筆者プロフィール)
橋本 智之
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ ビジネス開発部
API担当、新規事業開発担当
大学院卒業後、食品の品質管理(残留農薬検査など)、商品政策等の仕事に携わる。2020年6月より現職。中小企業診断士。
趣味は田舎暮らし、畑、食とお酒
水野
そうですね、第一弾の福田さんとならび若手の橋本さんが、シニア陣と議論を投げかけるのは非常に刺激的でした。
橋本
そうですね、個人視点でのメリットもさることながら、企業が取り組まなければならないことも議論できました。自分のキャリアや会社との立ち位置を整理することができてよかったです。
第二弾の「スキルシェアってどうすればいい?」ですが、副業という働き方を利用して、企業が不足しているスキルをスポットで確保できるようなメリットを感じました。前編ではスキルシェアについての考察と、それを上手に運用するために必要ないくつかの付随するポイントについて「理論編」としてまとめました。
水野
企業の人材確保視点でのメリット、興味深いですね。
それでは本編をお届けします!
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スキルシェアとは
「シェア」という言葉が広く世の中に浸透しています。カーシェアは街中でよく見かけるようになりましたが、Airbnbやウーバー、家事代行など、いわゆるシェアリングエコノミーの市場は2020年に2兆円を超え、今後2030年までに14兆円に達するという予測もあります。これまで個人や企業が独占的に「所有」することが当たり前だった世の中から、それをみんなで「共有」していこう、という思考の変化が社会全体で起こっています。個人の「スキル」も例外ではなく、人の保有するスキルを資産として捉え、特定のスキルを必要とする雇い手と、そのスキルを保有する働き手とをつなぐ「スキルシェア」の考え方が注目されるようになっています。
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用
日本における労働市場は、終身雇用を前提として新卒一括採用からひとつの会社に40年間所属し、異動や転勤、ジョブローテーションの中で、様々なスキルを獲得しながら働くことが当たり前でした。このような従来型の働き方は、「メンバーシップ型雇用」とも呼ばれ、職務内容よりも所属組織を重視し、等級と労働時間によって報酬が支払われる方法で、高品質の量産体制を築くことが競争優位だった高度経済成長期には最善の方法でした。しかし、昨今のIT技術の進歩により時間・場所の制約は縮小し、個人の働き方へのやニーズも多様化するようになってきました。このような社会状況下では、労働者を固定的に縛りつけ、重複したりミスマッチを起こしている人材を抱えることが、企業にとってのムダを招き、逆にリスクとなりつつあるのです。そこで、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」で職務を定義して雇用する制度である「ジョブ型雇用」が注目されるようになってきました。ジョブ型の考えでは企業全体で職務を網羅することに主眼をおかれ、それを充足すれば、労働時間や場所は必ずしも固定する必要はないと考えられるでしょう。副業にマッチした制度であり、スキルを持った人が、好きな時間に好きな場所で価値を出していく経験をできれば、労働者にとってはスキルアップや生きがいにつながるし、企業にとっては価値増強に対して人件費抑制につながることが期待できるでしょう。
ポータブルスキル
では、「ジョブ型雇用」で活躍するためには、特別なスキルが必要なのでしょうか?私は一定のスキルがあれば、本当に必要なのはコミュニケーション能力、自己解決能力であると考えています。逆に、コミュニケーション能力や自己解決能力がなければ、どんなに優れたスキルを持っていても、どのような職場でも力を十分に発揮できないのではないかとも思います。このように業種や職種が変わっても通用する、持ち運び可能な能力のことを「ポータブルスキル」と言い、「ジョブ型雇用」で新しい組織に適応し、活躍するためには必須の能力であると考えます。高度なスペシャリストを除き、業務上必要なスキルについては、いまやUdemyのようなオンライン講座などで数千円出せば獲得可能で、学習する能力(リスキリング力)が高ければ、すぐに追いつくことができると思います。そういう意味で、学習能力はひとつの重要なポータブルスキルかもしれませんね。
セルフアセスメント
多様化、分散化の時代にあって、仕事のやり方もジョブ型雇用へシフトしていくなかで、今後は労働時間ではなく職務を遂行するスキルが重要視され、ますますスキルシェアの需要は高まってくるでしょう。そうすると、労働者は様々なコミュニティに所属する必要性が出てくるため、専門スキルのほかにポータブルスキルも磨いていく必要があり、受け入れ側(企業など)もそれらのスキルを多角的に理解する必要があります。その両輪がかみ合って適切なシェアを実現するためには、労働者側のセルフアセスメントによる「スキルの可視化」と、企業側の「必要スキルの定義(=可視化)」が重要になるでしょう。
スキルの可視化によって効果的なスキルシェアが実現し、スキルシェアによって労働者・企業がwin-winになることができれば、そこで生まれた価値によって社会全体の利益が増大します。そんな未来はくることを、私は思い描いているのです。
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水野
橋本さん、ナイスなインプットです。ありがとうございます!
みなさん、第三回もお楽しみに~。
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