あまりに早すぎた保育園の洗礼の話
4月。入園入学シーズンの到来だ。
この時期になると、決まって思い出すことがある。
それは息子を出産し、保活も無事クリア。
晴れて入園の日を迎え、ひよっこワーキングマザーとしての職場復帰を控えた4月上旬、慣らし保育中の2週間のことだ。
慣らし保育初日。私はワクワクしていた。
慣らし保育期間中は、私に与えられる最後のご褒美タイムに思えた。
初日こそ1時間だが、翌週になれば半日、慣らし保育の終盤になれば夕方までは保育園に預かってもらえる。
買い物に行こうかな、友人に会おうかな、本も読みたいな、近場のランチスポットでも開拓しようかな…等々。
復職前にやりたいあんなことやこんなことを思い描いて、私は勝手に浮かれていた。
ましてや私の場合、産後の心身は不調続き。低温やけどが原因で蜂窩織炎を発症、更には皮膚欠損となり、週1回の通院は必須。復帰前に通院と治療が終了したのは幸いだったが、私の育休期間ははっきり言って楽しいものではなかった。
だからこそ、慣らし保育中の「ボーナスタイム」というべき自分の時間を、とにかく有意義なものにしたい。
私は心からそう思っていた。
しかし、そう上手くはいかなかった。
慣らし保育3日目の水曜日、保育園から連絡があった。
息子が37.5度を超える熱を出したとのこと。
まさしく「保育園の洗礼」。
その言葉は知っていた。保育園を経由し、今後幾度となく、かつ容赦なく貰う羽目になる、病原菌の破壊力。
しかしながらまだ慣らし保育3日目。その洗礼を受けるにはあまりにも早すぎて、私は心の準備がまるで出来ていなかった。
慌てて病院へ向かうも、当然ながらその週の後半2日、保育園は欠席せざるを得なかった。
そして迎えた週末。息子から移された風邪で、私は久しぶりに39度近い熱を出した。
1日で解熱したものの、焼けるような喉の痛みで食事も満足に取れない状態が続いた。
何だこれは、と思った。
私自身、身体は比較的丈夫な方だと思っていた。インフルエンザに罹ったことも学生時代に2回ほどしかない。
しかし、保育園から息子、そして私へと移るにつれ、なぜ病原菌の強度はあれ程までに増すのだろうか。
保育園の洗礼に苦しめられるのは子どもだけではない。私も、以後何度も苦しめられることとなるが、その記念すべき1回目がこれだった。
慣らし保育2週目。ひとまず回復した息子の横で、私の喉の不調は一向に治らなかった。
来週には職場復帰を控えている。子どもではなく自分の体調不良で初日から休むことになるかもしれない、そう思うと私の気分は沈んだ(実際はなんとか出勤することができたが、初日から子どもがまたしても発熱。保育園からも呼び出され、時間休を取得することとなった)。
アクティブにボーナスタイムをエンジョイする、そんな気持ちになど全くなれなかった。
保育園に息子を預け、近所のクリニックから貰った薬を飲みながら、残りの時間は自分自身の療養に充てるのが精一杯だった。
慣らし保育最終日に近所の店でラーメンを食べ、職場に持参する菓子折りを買いに行く。慣らし保育中に私が出来たことはそれくらいだった。
つくづく、楽しくない育休期間だった。
あれやこれやと慣らし保育中の楽しい自由時間を思い描くのは結構だが、あくまで理想は理想。
慣らし保育中、やりたかったあんなことやこんなことがひとつも叶わなかった私は、職場復帰前に図らずも意識改革をすることができた。
保育園の洗礼は甘くない。
復帰される方は是非、お子さまとご自身の体調管理第一でお過ごしください。