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【洋楽】祝全英1位!今こそSnow Patrolを語りたい

Snow Patrolが遂に帰ってきた!!

2024年9月20日付の最新のUKアルバムチャートは、そう印象づけるのに十分だった。

オリジナル作品リリース自体が6年ぶり。
しかも全英1位となると、彼らの代表作である4枚目"Eyes Open(2006)"まで遡らなくてはならない。そのため、バンドの公式Xでも触れられていたとおり1位は実に18年ぶりとなる。

私は、遠く離れた極東地域に住むただのいちファンに過ぎない。
けれども、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しい。

ということで、こんなおめでたい時こそ、そして気候がようやく秋めいて涼しくなってきた今こそ、私はたまらなくSnow Patrolを語りたくなった。


これは自慢して良いと勝手に思っているのだが、彼らの初単独公演に、過去の私は足を運んでいる。

公演日は2006年2月21日。
18年前のチケットの半券を、私は今でも大切に保管している。

"Eyes Open"リリース前という絶好すぎるタイミングと、その後の商業的成功。そして、これ以降バンドセットでの日本単独公演は行われていない(フェスは2016年フジロック、2019年サマーソニックのアコースティックセットのみ)ことを考えると、代官山UNITのキャパで4,000円はとにかく破格。
昨今の円高の状況を抜きにしても、もう2度とこの規模感で彼らのライブを観ることはできないだろう。

ちなみにこれが私にとっては人生で2度目のライブで、ライブハウスでのライブは人生初。
18年経った今でも、この時のライブはそれはそれは強く私の印象に残っている。その時の音源は、前述した"Eyes Open"の日本盤ボーナストラックとして収録もされている。


2000年台前半のイギリスの音楽シーンは、Franz FerdinandやKeaneなどが立て続けにヒットし、ロックバンドがブームとして盛り上がっていた時期。
彼らの3枚目のオリジナル作"Final Straw(2003)"は、そんな中で国内盤化された。

オルタナティブロックの王道を行く、ノイジーなギターが全面に出た曲が中心の序盤。後に彼らの代表曲となる"Chocolate"や"Run"といった、実直で真摯な歌が胸を打つ中盤。そして、曲も歌詞もぐっとシリアスさを増す終盤。
こういうグッドメロディーが聴きたかった!と、その年の個人的No.1とでも呼びたい位に、当時は本当によく聴いていた。
実のところは半分ジャケ買いのようなものだったのだが、ジャケ買いでここまで大当たりしたのはこの作品が最初で最後かもしれない。

あまりに彼らの音楽が好きすぎて、2006年夏に渡英した際には、ロンドンのHMVで彼らの2ndアルバムを購入した。
帰国後に通しで聴いて驚いた。同じバンドだっけ?と一瞬錯覚したほどに、あまりにも地味なアルバムだったからだ。

印象に残るのは、ともすると自信なさげにも聞こえる、囁くようなGary Lightbodyのボーカルだ。

2ndが売れずに当時所属していたレーベルを解雇されるなど、彼らが売れるまでのキャリアは苦労が多く波瀾万丈。
そんな暗闇の中でも明かりを灯して、どうか君に届けとばかりに声を張り上げて歌う"Run"のボーカルスタイルは、挫折を振り切ってそれでも進む覚悟をひしひしと感じる。
そして、ヒット曲を出して自信をつけたのか、4th作となる"Eyes Open"からは、明らかにGaryの歌声に説得力が出てくるのだ。

寒そうなバンド名が表すとおりのひんやりとした空気感を纏いつつも、彼らが演奏する音楽からは温かな人間らしさが確かに感じられる。そんなところが、私はとても好きだ。


彼らの作品はリリースの度にチェックし、いずれも例外なく愛聴していたが、ある時期を境にパタリと音沙汰がなくなった。6枚目"Fallen Empires(2011)"から次作の"Wildness(2018)"がリリースされるまで、実に7年もの月日が流れている。

何があったのか。その答えの一部は次の記事を参照されたい。

大分サラッとした文章にも思えるが、現地の記事をよくよく読むと深刻な内容も含まれており、

A doctor told him he had to stop drinking or he'd die - so he resolved to give it up for a month. Two years later, the 41-year-old is still sober. But it hasn't been easy.

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-44725186.amp

酒やめなきゃ◯にますよ、とまで医者に言われていたらしい。相当な重症だったことがわかる。

全文はこちら(英語記事)。

Garyとはまるで比べものにならないが、リリースのなかったこの7年間は、私が新卒で就職した仕事に適性を見出せず、四苦八苦していたあの6年間の苦い時期とも重なる。

7年という期間が空いても、彼らは音楽を作ることを諦めなかった。そんな姿にとても私は励まされたし、(あまりに月並みな表現だけど)私も新天地で頑張ろう、そう心から思えたのだ。

アルバムの中には苦しむ過去の自分に言い聞かせるような、そんな楽曲も収録されている(これは原曲バージョンだけど、抑制されたトーンで始まり時間をかけてじわじわと盛り上がるReworkedバージョンもこれまた良いんだな…)。


あれから更に6年が経ち、遂にリリースされた新作"The Forest Is The Path"。私はここのところ毎日のように聴いている。

またしてもリリースまでの期間が空いたこと、そしてアコースティック編成でツアーを回っていたかと思ったらメンバーが本当に減っていたこと。心配材料はあったが、会心のカムバック作だと思う。

"Hold Me In The Fire"のようなロックのダイナミズムを全面に出した曲は本当に久しぶりに感じるし、これからの季節に沁みる歌心溢れるギターロックは健在。
中でも個人的にグッと来たのは3曲目の"Everything’s Here and Nothing’s Lost"。

Everything's herе and nothing's lost
As long as you don't give up on us

Snow Patrol "Everything’s Here and Nothing’s Lost"

歌詞の全体像からすれば、疑いなくこれはラブソング。けれども、これまでの彼らの決して順風満帆とは言えなかったキャリアを振り返った上で、それでもなおこんなポジティブな言葉が出てくるのかと思うと、彼らは何と優しくて誠実なバンドなんだろうかと恐れ入る。

活動してくれるだけでも嬉しいことは言うまでもないが、次は是非メンバー全員で来日してもらって、2006年以来実現していないバンドセットでの来日公演が実現することを願っている。

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