【読了 2024 No.28】佐藤優著『メンタルの強化書』(クロスメディア=パブリッシング)読了
著者は、最近、心を病んかでいる人が多い背景を「日本社会が急速に新自由主義化しているために、ビジネスパーソンが常に競争圧力にさらされているから」と考えている。
「新自由主義を推進すると弱肉強食の社会になる」わけで、こういう世の中でいわゆる「勝ち組」になるには、「図々しい人」=下品な人にならなければならないことになる。しかし、この本は、図々しくなってのしあがれ!という本ではなく、「下品に落ちることなく、強く生きるにはどうしたらいいか?」を探る本である。
結論についてはネタばれになるので書かないが、「昔から1日4時間眠れば、疲れが取れる体質」な著者が、「大多数の皆さんは最低6時間、できれば7時間から8時間は睡眠を取る必要があると思います。」と書かれても、全く説得力が無いように、その「結論」が本人の経験に基づいたものでなかったら、やはり説得力はない。
それにしても、「朝食は抜かしてはいけない」にしろ、「最低7時間は寝ないと脳に影響が出る。」にしろ、なんか「神話」なんじゃないかなぁと思えてくる。
私も昔っから4時間も寝れば十分な人、いわゆる「ショートスリーパー」。気にすることは無いのかと思う。
個人的に最も関心を持ったのは、結論とは直接関係無いが、マルクスの宗教論であった。
彼は宗教を「なやんでいる者のため息であり、…民衆のアヘン」と表現している。要するに、「宗教は現実に対して判断停止を行わせるもの」で、宗教は自らが「作り出した空想的なストーリーによって現実を説明し、一種の陶酔感の中で人々を幻想の中で納得させ」るということである。
読み返してみて思ったのは、この「一種の陶酔感の中で人々を幻想の中で納得させ」ることと、この本の結論につながる「諦め」や「達観」の境地はストレートに繋げられたのでは?という疑問でる。著者の多岐にわたる知識量が、脱線につながり、本全体のまとまりを悪くしてしまったようだ。
これは著者だけの責任ではなく、編集者の力量不足によるものなのかも知れない。有名な著者の本であっても、なるべくマイナーな出版社の書籍は買わないようにしようと思った。
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