たまには こんな日曜日。ご自愛Sunday
在宅勤務シーズンⅢの開始から、3週間。
職場での勤務人数を半分にするよう指示があり、交代で在宅勤務をしている。連絡はチャットとメールと時々電話。さすがに3回目ともなると、春先のように昼夜かまわず問いあわせが押しよせることもなく、平穏無事な毎日を過ごしている。
でも、疲れるのだ。
残業は1日あたり1-2時間程度だから、多くはない。
毎晩バスタブのなかでnoteさんぽをするのだけれど、スマホを湯に落っことしそうになって、目が覚めることが増えてきた。
ひととおり夜の家事を終え、PCでコメントの返信を書いたり、記事の下書きを始めると、あっという間に眠くなってしまう。キーボードに指をのせたまま、とろとろとろ・・・と浅い眠りに引き込まれるような感覚がどうにも抗いがたく、ついつい手が止まってしまう。
これは、いかん。
こんなに眠いなんて、何かがおかしい。
眠い理由はわからないけれど、感覚的にそう思った。
今のうちに休もう。寝よう。そう思って、全力で眠ることにした。翌日は休みだから、アラームの心配もしなくていい。春のようになってからでは、遅い。
環境をととのえる。
枕元にたたんだティッシュに、精油を1滴ずつたらす。今夜の香りは、リトセア、ベルガモット、ユーカリ・グロブルス、ラベンダー・アングスティフォリア、サンダルウッド。合計5滴のうち、ラベンダーの1滴は、よく効く眠り薬。
ボトルを収めた木箱を片付けたら、灯りを暗くして。
イヤホンをつける。
アプリで再生するのは、睡眠用のクリスタルボウルの動画。できるだけ音程がぼんやりしていて、クリスタルボウルだけの音で構成されているものを選ぶ。脳がドレミを解析するのを防ぐために。
途中に広告が入っていないかを、注意深く確認してから、再生して。
ベッドにはいる。
どうせ、胎児のように身体をまるめてしまうのだけれど、最初だけはあおむけで寝てみる。肩までふとんをかけて、温かいアイマスクをして、まぶたをとじて。
ゆっくりと息を吐く。ふぅぅぅ・・・。
肺が空っぽになったら、今度はゆっくりと吸っていく。すぅぅぅ・・・。
爽やかなユーカリと柑橘の香りで肺を満たしたら、またゆっくりと吐いていく。時おりクリスタルボウルの音が鼓膜を揺らす。ほのかに甘いサンダルウッドの香りが鼻腔を満たして、ラベンダーが脳の奥に白いもやをかける。
すって・・・はいて・・・すって・・・はいて・・・。
ふと浮かんでくる仕事を、よっこらしょと脇へのける。
すって・・・はいて・・・すって・・・はいて・・・。
足の裏があたたかくなってくる。頭が枕に沈みこんでゆく。沈むのは眠りの底かもしれないけれど、とろりと眠気がやってきて、とろりとまぶたが重くな・・・。
気付いたら、朝だった。ぼんやり明るくなった空間に、娘のスマホのアラームがけたたましく鳴っている。
目や耳をおおっていた道具をはずし、ベッドに身体を起こす。頭がどことなくスッキリとしている。
やっぱり、泥のように眠ることを身体が欲していたのだと思った。
キッチンに立って湯を沸かす。何も予定がないと言っていた娘は寝かせておいて、自分のために珈琲を淹れ、パンをトースターに入れる。
顔を洗うと、鏡のなかの伸びかけの髪が気になった。
その欲求は突然やってくる。
京都には行けなくても、予約を入れていなくても、髪なら切れる。
朝の家事をひととおり終えると、思い切って寒い洗面所で服を脱ぎ、バリカンを手にとった。
カットそのものは ものの10分もあればできてしまう。
なぜかというと適当だから。適当にブロッキングして、適当にバリカンをかけ、適当にハサミで整えていく。手慣れた作業なので後片付けもらくらく。
カットした流れで縮毛矯正もかけて、シャワーで2液とトリートメントを流したら、岩塩の入浴剤を入れたバスタブへそろりと入る。
冷え切った身体をバスタブに沈めて、ゆっくりと息を吸う。
ロータス&ジャスミンの甘い香りを胸いっぱいに吸い込んだら、ゆっくりと息を吐く。タイマー代わりに使っていたスマホは、洗面所に置いてきた。張った首すじに手を当てながら、目を閉じて、深い呼吸を続ける。
もう、仕事は追いかけてこない。
軽く汗ばんできたところで、もう一度シャワーを浴びた。
ベリーショートだから、乾かすのはあっという間。
美容院で縮毛矯正をかけると、美容師さんが必ずこのタイミングで言う。「触ってみてください」って。
だから、触ってみる。
さらさらするするの指どおりが心地いい。
そう思った瞬間、鏡のなかでおだやかに微笑んでいる自分に気付く。
出かける予定はないけれど、普段は塗らない紅を引いてみる。久しぶりに見る“わたし”が、そこにいた。
わたしはわたしを甘やかす。
たまには、こんな日曜日があってもいい。
「おはよう」
2階から寝起きの声が降ってくる午前10時。
「ゆっくり寝てたねぇ」と笑いながら、わたしはキッチンへ向かう。
春先の在宅勤務シーズンⅠで、行くところまで行ってしまった時の話は、こちら。