この瞬間の空気を

画像1 空っぽの観客席にミットの音が響きわたる。思いきりつま先立って、フェンスに身体を押しつける。ひじとひざで身体を固定し、グラウンドへ乗り出してカメラを構えた。枯れた芝生の香り、ベンチからの声援、海風にはためく大会旗、一瞬の静寂、硬球の乾いた響き、土削るスパイクの音、湿った土煙のにおい、湧きあがる歓声。シャッターを切りつづけ、食らいつく。彼らの突きあげた拳に、はじける笑顔に。二度ともどれないこの瞬間の空気を、永遠に閉じこめたくて。     ーーー準々決勝 彼らの最後の試合まで、あとひとつーーー

ここまで読んでくれたんですね! ありがとう!