モノクロームで撮りたくなるのはなぜだろう ―現像されたのはジブン―
旅先で撮った写真には、たまにモノクロの写真が混ざっている。恵比寿、横浜中華街、鶴橋コリアンタウン…。エネルギーが渦巻く街にレンズを向けるとき、モノクロームで撮りたくなるのは、なぜだろう。
もちろん意図的にカメラ側のモードを切り替えて撮るのだから、わたし自身の感覚によるものであることは間違いない。
12月、友人たちと大阪へ出かけた。目的は大阪城ホールで行われるイベント、お正月特番「超スポーツULTRA」の公開収録。お目当ての選手はふたりがたくさん撮ってくれるだろうから、わたしはちいさく軽い Batis 2/25を選んだ。F値は2.0、焦点距離は25mm。明るい広角の単焦点レンズをフルサイズ機に装着して、スナップ撮影に終始する。
1日目は友人の案内で京セラドーム大阪のオリックスのグッズショップへ行ってみたり、鶴橋のコリアンタウンを歩き回って、韓国コスメを物色したり、純豆腐を食べたりしてから、ホテルへ。日没後、ホテルの向かいにある大阪城ホールへ公開収録を見に行く。
宿泊したホテルでは、顔を見ただけで名前やプレーが思い浮かぶNPB各球団のスター選手たち数人とすれ違い、胸が踊った。翌朝のビュッフェでは、2つ向こうのテーブルで憧れの選手が朝食をとっていて、このホテルを「去年泊まったとき朝食が美味しかったから、絶対朝食つきで」と予約してくれた友人たちに心から感謝した。こんなに間近で、ゆったり笑顔で語らっている秋山翔吾を見られるなんて…! そっとただ見ていただけのひととき、一生の思い出にします。
チェックアウト後は、通天閣初体験という友人たちと、コッテコテの大阪の観光地へ。
旅のあいだ、キャップを外したままのカメラで、記録のように手当たり次第シャッターを切った。
エネルギーの渦巻く街をモノクロームで撮りたくなるのは、自分がフラットでいたいからかもしれない。
マスクのすき間から入り込んでくる、生命のにおいの生々しさ。
瞳から流れ込んで脳内を刺激する、人工的な極彩色の街の圧。
主張するそれらから一歩、距離を置いて。
レンズを通すと、自分が見える。
そんな気がした2023年冬の旅。