今すぐ穴を掘ってくれないかな。私が入るからさ。
ちょいと、そこのあんた。
いいガタイしてるねぇ。ここに穴を掘ってくれやしないかい?
なんで?って、そんなこたぁ聞くもんじゃないよ。
私ゃ今すぐ入りたいのさ。
よく言うだろう?
「穴があったら入りたい」って。
え? あんたは入れたいって? そんな物騒なもん、とっととしまっときな。
いや、私のこの話を聞いたらねぇ、そんな気どっかに失せちまうよ。
なんだい、聞くのかい? あんた、勇気あるねぇ。
◉ ○ ◉ ○ ◉
ええ。みなさまに穴を掘らせるくらい恥ずかしいので、時代がかったセリフ回しで始めましたが、これは小説ではありません。
今から書くのは、ハートフル・シモ・ノンフィクション。
端的に言えって?
シモもシモ。
え? シモシモ〜じゃないってば。
シモもシモ、大シモの穴ネタでございますので、「シモなんてお下品よ!」っていう方はどうぞお引き取りいただきますと同時に、どうかお食事中のみなさまは、お食事もトイレもお済ませになってから再度ご来場くださいますよう、お願い申し上げます。
飯がまずくなっただの、気分が悪くなっただの、美味い酒を返してくれだの、苦情はコメント欄にてお受けいたしますが、先に注意喚起をさせていただいたことだけは、どうぞお忘れなきよう。
◉ ○ ◉ ○ ◉
いえね、シモだの穴だのの話って、noteでは実に書きにくくてですね。
前のブログだったら、ペロっとポロっと書いてたんですけど。
・・・かと言って、ここでよく見かける有料記事にするほどの話でもないんです。
お目汚しなのは確実ですから、有料どころか有償って言われるかもしれませんけどね。
え? もう汚れたから払えって? 苦情はコメント欄にって言ったじゃない。ね?
前置き長いって? すみません。
なんてったって恥ずかしいもんだから、歯切れが悪くなっちゃって。
なぁに?
せめて、上か下か前か後ろか、どの穴かだけでも教えろって?
いったい、なに聞いてるんでしょうか? まぁ、いっか。
告白しましょう・・・
全部です。
要は恥ずかしくて、今まで言えなかったような話をしようってnoteです。
大事なことなので、もう一度言いますよ。
今、ご飯食べながらこのnoteを読んでいる そこのあなた!
ご飯を食べ終えたら、もう1度来て下さい。待ってますから。
ここまでで充分恥ずかしいだろって言われそうですが、更に恥ずかしいので、もうさっさと始めちまいましょう。
◉ ○ ◉ ○ ◉
今回の登場人物は、ふたり。
つまり、おとちゃんと私です。
ふたりきりの密室で、いったい何が起こったのか?
さぁ、一緒にずいぶん昔のあの事件まで、記憶を遡っていくとしましょうか。
仲間内ではビール好きで知られるおとちゃん。
実は、芋焼酎以外なら何でもいけます。
日本酒・ウィスキー・焼酎・ワイン・カクテル・・・基本、辛口が好みではありますが。
その晩は、彼女の好みを考えて仕入れてきたフルーティーで辛口、ほどよい渋みのミディアムボディの赤ワインを持参して、おとちゃん家での宅飲みでした。
季節は夏。こども達はいなくて、“お母さん”の顔は棚に上げておけるお気楽な夜。
飲むときには何も食べない彼女ですが、あまりアルコールに強くない私のために、おつまみを準備してくれていました。
彼女は普段どおり手酌でごくごく。
私はおつまみを もぐもぐ。たま〜に赤ワインを ごっくん。
借りてきた映画を再生したり、喋ったり、食べたり、笑ったり、喋ったり、飲んだり、ゲラゲラ笑って転がったり、喋ったり、映画をチラッと観たり、楽しくて忙しくて楽しい。
そのうち、おつまみを食べているにもかかわらず、おなかが空いてきました。
それを察した彼女がささっとキッチンに立って、美味しそうなものを作り始めたので、私もワイングラスを持ってキッチンへ移動。
だって、調理する手元を見るのは楽しいし、味付けも知りたいし、何より、その間も喋っていたいんだもん。
くはぁー。このワイン、おいしーねー♪
もう、十二分にご機嫌さんです。
ここまでは良かったのです。
楽しくて美味しくて、素敵なオトナの時間でした。
ここまでは。
ワインの味も覚えてたし。←そこ?(笑)
手元見たさに、急に動いた私が馬鹿でした。
ワインを飲みつつ、キッチンのカウンターに座り、おとちゃんを眺めながら話していると・・・何となくふわふわする。
何となく。
この感覚、身に覚えがある。
その時はまだ、その後の悲劇を予想もしていなかったけれど。
ちょっと酔ったかも
向こうで座ってるね
・・・とリビングのソファに戻りました。
そのうち、美しく盛り付けたおつまみを持った彼女が現れて、おなかが空いていた私は、ぱくぱく。
おとちゃんの料理は、いつ食べても美味しい。
感動しながら食べていると、彼女が手を滑らせて何かを落としたので、私は座ったまま足もとに手を伸ばして、それを拾いました。
二度目ではありますが、もう一度言っておきましょう。
急に動いた私が馬鹿でした。
拾ったものを彼女に渡した瞬間、視界がグラ~ン・・・と揺れ、同時に冷や汗が噴き出してきます。
これは、ヤ・バ・イ!
ト・・・イレ
・・・と、かろうじて告げ、動こうとするのですが、貧血状態のようで思ったように歩けません。
仕方がないので、彼女にリビングのドアを開けてもらい、廊下をハイハイしながら10歩もない距離のトイレにたどり着きました。
とりあえず、胃の中にあるアルコールを排出しよう。
ピカピカに磨かれたトイレを覗き込んだら、指をつっこむまでもなく、ボルドー色の何やらをピロピロ(自主規制)できました。
うわ〜、上手! 上手に吐けたね〜!
死にそうになっていても、褒められれば自己肯定感爆上がりです。
私、ピロピロ上手!
何だろうね。こういうスキルだけは、無駄に高い。
でも、気持ち悪い。
胃が痛い。
・・・吐き気がすると便意をもよおすのは何故だろう? あ、言っちゃった。まぁ、いっか。この際。
心配して背中をさすっているおとちゃんに、ウィスパーボイスで伝えます。
うんち出るぅ・・・
わかるわかる! 気持ち悪くなると、うんちしたくなるよね~
ほら、立てる?
ヨロヨロと手すりにつかまり、ズボンもパンツも脱がせてもらって、ヨレヨレのままトイレに座ります。
見られてると落ち着かないだろうから、テーブル片付けてくるね
彼女がトイレから去っていく足音と同時に、私は無事に我慢を解き放ちます。
でも、座っているうちにめまいはするわ、胃は痛いわ、気持ち悪いのはおさまらないわ・・・冷や汗が噴き出してきます。
上はTシャツ。下はすっぽんぽん。
2歳児以来記憶にないこの情けない姿のまま、のろのろとおしりを拭いて水を流し、もう一度トイレに顔をうずめ・・・また、上手にピロピロ成功。
でも、またもやおなかがぎゅるぎゅるぎゅる。
立ち上がったら・・・
なぜかヌルっとした。
???
頭に???は浮かんだけれど、そんなこと考えちゃいられない。
2度目のぎゅるぎゅるアルコール排出もスムーズに終わり、もう、上からも下からも出すものはない。
どれくらい経ったんだろう。
しばし異次元へと旅立っていたので、時間の経過は曖昧だった。
しばらくトイレに座ったまま、壁の手すりに寄る辺のない身体を預けていると、唐突に思い出した。
しかもハッキリと。
さっき・・・ヌルッとした!!!
便座に座ったまま、おそるおそる足の裏を覗いて見ると・・・(←トイレから転げ落ちそう)
・・・足の裏に・・・
あぁ、私のハダシの足の裏に!!!
うんちがぁぁぁあああっ!!!!! 泣
吐くときにかかった腹圧で、押し出してしまった様子。
嗚呼、飛散!
え、字が違うって? 合ってるかも・・・しれない。これで。ある意味。
とりあえず、トイレットペーパーで拭いてみました。
ごしごし。ごしごし。
まぁね、取れますよ。うんち。
でも、このままじゃ、トイレから降りて歩けない!!!
ここへきて、本当の意味で顔面蒼白です。
ど・ど・ど・どうしよう・・・
でも、いくら酔っぱらった頭で考えたところで、解決の道はありません。
トイレに座ったまま、ひとりで足を洗うのは不可能です。
無理やり便座に座らされたテディベアのように、空中に脚をフルフル投げだしたまま、意を決して、のろりとドアを開けました。
おとちゃ〜ん・・・ちょっと来て・・・
このときの声の、情けなかったことったら!
だって、こんなに恥ずかしいことって、ないじゃありませんか!
いいオトナが、自分で自分のうんちを踏むなんて!!!
しかも、ハダシで!!!
すぐに飛んできてくれたおとちゃんに、情けなーい声のまま、ホウ・レン・ソウ。
ホウ・レン・ソウ・・・と言えば、何のことか解りますね?
報告・連絡・相談!
知らなかった人は、覚えてくださいね。
うんちを足の裏につけてしまったときには、必ず必要になるコミュニケーション術ですから。
私からコトの次第を聞いたおとちゃんは、すぐさまキッチンや洗面所から様々なグッズをかき集めて戻ってきました。
彼女は、アロマセラピスト。対象者の緊張や羞恥心を取り除くため、バスタオル等を使って上手に隠しながら施術することには慣れています。
テキパキと私の足の裏をお湯で拭き、エタノールで消毒した後、私を抱えてトイレから連れ出しました。
動いて更に気分が悪くなるといけないからと、そのまま廊下で横にならせて、彼女はトイレの床をとりあえず掃除。
何しろ、ヌルっ!の正体がうんちだと気付くまでに時間がかかったもんですから、色々とね、厄介ですよ。
その後、おとちゃんは廊下に転がった私・・・念のためもう一度言うと、上はTシャツ、下はすっぽんぽんのうんち女の足元に座り、再度お湯で足を拭き、指の間から爪の内側まで丁寧に丁寧に拭いました。
その清拭は、だんだん本丸へ向かって行き、ついには三つの穴の周りまで到達しました。
気持ち悪かったね~
もう胃は痛くない?
どこかについてたら、気持ち悪いだろうからね
そう話しかける彼女は、まるで聖母マリアのような面持ちでしたし、いたわりながらの清拭は細部に及びました。
つまり、どんな小さなシワの間もすべて。
そんなところを誰かに拭いてもらうのは、もちろん赤ちゃん時代と出産を除けば、もちろん初めてのこと。
丁寧に拭いてもらっている間に、酔いはどんどん醒めていきます。
出るものすべて出し切って、身体はぐったり意識はハッキリだった私は、ただ、ただ、申し訳なくて、でも、まだ身体にチカラが入らなくて、横になったままうなだれていました。
ごめんね~・・・介護させて
いいよ~、ぜんぜん
気にしないで♪
吐き気が治まってきて良かったよ!
こんな会話を何度となく繰り返しているうちに、うんちを拭かせていながら誠に不謹慎ですが、笑いがこみ上げてきます。
もう、これ以上恥ずかしいものは何もないや
そうでしょう?
もう何も隠すものないもんね
うん。おしりの穴まで公開しちゃったし。
廊下で寝転がっておしりを拭いてもらいながら、おとちゃんの慈愛に満ちた介抱に、感謝と申し訳なさで胸がいっぱいになりました。
それにしても、赤ワインで乾杯♪のオトナの時間から、要介護のオトナ過ぎる時間に急降下。
やっぱり、お酒は飲んでも飲まれるな!ということでしょうか。
それ以来、お酒はほとんど飲みません。
お酒の味も飲む雰囲気も大好きだけど、仮に飲んでも味見だけと、かたく心に決めています。
以上、穴があったら入りたい!話は、いいオトナが穴のシワまで拭いてもらったハートウォーミング?なノンフィクションだったのでした~。
ここまでお付き合いくださったみなさま、お粗末さまでございましたー。
飲みすぎ注意! ちゃんちゃん♪ 笑
あーもー、恥ずかしい!
だれか、今すぐ穴を掘ってくれないかな。私が入るからさ。
◉ ○ ◉ ○ ◉
この話は、以前別のブログで書いた文章を、note用にリライトしたものです。
書いたきっかけは、この作品のコメント欄での会話でした。
オトナすぎる私の話とは違って、いたいけな少年のお話です。
タイトルも好き。
僕はうんちを漏らした。それは確かだ。そして今後も物理的うんちや、概念的うんちを社会で漏らして行くのかもしれない。何やってんだよおれ、クソだなぁ、と思うだろうけど、クソの先には寂寥と諦観の世界がある。