
Let's go to the stadium ! #3000字に込めた偏愛
カレンダー通りの出勤だったから、5月2日のことだ。Twitterを見たら「#GW中日」というハッシュタグがトレンド入りしていて、選手かチームに何かあったのかと焦った。何しろ例の感染症のせいで試合中止になったり、選手・スタッフの入れ替えを余儀なくされたりしている今シーズン。GWの試合が中止になってしまったら、わたしの連休は空っぽになってしまう。
あわてて「#GW中日」をクリックして・・・拍子抜けした。
何のことはない。「ゴールデンウィーク・なかび」であって「ちゅうにち」ではなかった。わたしと同じように飛び石で働いている人が労いのことばをつぶやいている。働くみんな、ありがと! カンパイ! 試合中止じゃなくてホッとしたよ!笑
野球用Twitterのその日のタイムラインは、同じ読み間違いをしたたくさんの同志(竜党=中日ファン)で賑わっていた。そうよねそうよね。「中日」と書いて「CHUNICHI」と読む。これ常識!(んなわけない)
⚾
観戦予定が詰まったGWといえども、Twitter竜党たちの言う「現地」(球場での観戦)の予定は元々なかったんです。全部テレビ。
今年はオープン戦も含めて既に現地3回。それでもGWのチケットを取らなかったのは、娘がいつ帰ってくるか直前までわからなかったからです。
結局、娘は1泊2日の弾丸帰省。しかも夜行バスで朝帰ってきて、そのまま同じく帰省している野球部の仲間たちとBBQをするから送迎してほしいとのこと。昼前に隣県まで送っていって数時間後にお迎え。そうなると、いったん家に戻るのも時間の無駄だしなぁ・・・と近くの野球情報を調べてみました。するとBBQ会場から30分くらいの球場で、社会人野球の試合が。しかも、ちょうど高校野球時代を知っている選手もいるチーム。
娘に「待ってる間、◯◯球場で社会人(野球)見てこようかな。◯◯杯やってるんだよね」とLINEしたら、告白されました。
「wwwwww ちゃんとガチ勢で好きだよ」
だろ? 照れちゃうぜ(*´ω`*)
当日、ドラゴンズのテレビ中継は録画予約して、娘を送り届けたのち、わたしはいそいそと球場へ向かいました。

プロ野球でも高校野球でも社会人野球の試合でも、めちゃめちゃテンションが上がる瞬間があるんです。ここ。通路を通って場内へ続く入り口へきた瞬間、急に視界が広がり、空気が変わります。

きらめく初夏の陽射し、頬をなでる風、木製バットの乾いた音、ブルペンの捕球音、さざめく観客席、グラウンドに響きわたる選手の声・・・。
ほら、好きなアーティストのライブ会場に入る瞬間と同じです。ライブとちがってセットが変わるわけではないけれど、もうね、この空気だけで胸が高鳴っちゃう。
空は青く、スコアボードの上の旗は時おり揺れています。プロ野球じゃないから録音の応援歌もかからないし、ビールの売り子もこないけれど、持ってきたおにぎりを食べながらのんびりと試合を観るのです。
あたたかくて、風が心地よくて、最高に気持ちいい。
⚾
もうひとつの #GW 中日? の6日。直前のDeNA戦で負け越して残念な気持ちで出勤したのですが、上司からとんでもないプレゼントを受け取り、朝からテンションMAXになりました。

取引先から頂いたというチケット。しかも、普通には購入できない正面バックネット裏のプラチナシートです。急きょ午後休を取り、家で応援グッズやユニフォームをピックしてから、足取り軽くバンテリンドームナゴヤへ向かいます。
脳内では「野球場へゆこう」がエンドレスリピート。ドームへ行くといつも通路でかかってるんですよね。明るくて単純なメロディ、いつの間にか覚えてしまう歌詞。開幕の3月末などにはよくテレビCMで流れていたので、聴いたことあるって方もいらっしゃるかな?
だから僕たちみんな 野球場につれてって
だから僕たちみんな 野球場へゆこう
⚾

場内へ入ると、タイガースの選手たちがフリーバッティングをしています。推し選手監修の味噌カツバーガー(カツは写真より大きい!)をほおばりつつ、手のひらサイズの選手名鑑とにらめっこ。練習着の背番号だけではわからない相手チームの選手を名鑑で探し、誰が打っているのか見るのです。スマホでもできるけど、パラパラめくるのが好き。ふむふむ。快音を響かせて柵越え連発なのは、糸井。当たり損ないが多くてゴロ気味なのは、山本。
そのうち目の前にドラゴンズの選手が姿をあらわします。楽しげに話しながら思い思いにストレッチをする選手たち。試合の30分ほど前にはスタメン発表。その頃、ベンチ前では選手たちが円陣を組むのです。何を言ってるのかはかき消されても、円陣の締めでいっせいに叫ぶ掛け声だけは聞こえます。チケット受け取り時にMAXだったテンションは、すでにリミッターを振り切ってます。テンション無限大∞で、気分だけは一緒に叫んでる。
「さぁ行こう!」
中日の先発は2020年沢村賞投手の大野雄大、阪神は2021年最多勝投手の青柳晃洋。試合は過去に経験のないほど緊迫した投手戦となりました。何しろ塁上にランナーがほぼ出ないのです。
青柳は2回と8回にランナーを出したものの、四死球もなく終始危なげないピッチング。一方の大野は球数は多いもののひとりのランナーも出していません。9回終了時点で打者27人相手にパーフェクトピッチング。
たぶん観客のほぼ誰もが完全試合継続中に気づいていたはず。大野がマウンドへ上がるたびに球場全体の拍手が徐々に大きくなっていきます。わたしは7回あたりから応援バットを握りしめて、ただただ祈っていました。打たれませんように。一刻もはやく援護点が入りますように。
無限大のテンションはもはや血圧に転化され、心臓がバクバクして口から胃が出そうです。流し込んだノンアルビールも吐きそう。
結果、延長10回表2アウトから佐藤輝明にツーベースを打たれて、大野の完全試合は消えます。その裏、ドラゴンズは敬遠を挟むヒット3本で好投の青柳投手から1点をもぎ取り、サヨナラ勝利をおさめました。
石川昂弥がサヨナラタイムリーを打った瞬間、左腕にアイシングを巻いたままの大野は両手に祝い水のペットボトルを持ってベンチを飛び出し、笑顔で石川に駆け寄りました。
【ドラゴンズ】
— 中日新聞写真部 (@chunichiphoto) May 6, 2022
サヨナラ打を放った石川選手とハイタッチを交わす大野投手。10回1安打完封おめでとう❗️❗️❗️#大野雄大 #石川昂弥 #ドラゴンズ #中日新聞 #中日スポーツ pic.twitter.com/dEU5ZVDXNG
内心、悔しくてたまらないはずです。大野雄大は33歳。先日、完全試合をやってのけた20歳の佐々木朗希とはわけが違います。こんな好機、人生に一度訪れることすら珍しいのですから。
それでも試合後のインタビューで悔しがる素振りも見せず、大野は満面の笑みで「ほんまにみんなよく守ってくれたと思いますし、ありがたかったですね」と、穏やかな京都弁でチームメイトへの感謝を口にしました。投手キャプテンとして仲間を労い、チームの勝利がいちばんだと言いきり、仲間を盛り立てる大野はほんまにかっこいい。
29人の打者に対してパーフェクトピッチをした投手は史上初だけど、記録としては完全試合ではなく1-0の「完封」。
それでも、思うのです。
たとえ記録には残らなくとも、記憶に残る。そんな中日ファンに語り継がれるであろう伝説の投手戦を現地で体感できたこと。この言い尽くせない感動は幻ではないし、わたしはきっと生涯わすれない。
⚾
「野球場へ行こう」の歌詞には、こんな続きがあります。
汗まみれの背番号 胸にあつく焼きつくよ
歓声が響いてる 野球場へゆこう
語りつづけたい伝説が生まれて
打球の行方は明日へ延びる
どんな時代もいつもひかり
勇気あふれてる
次の時代もきっと 野球場へゆこう
「語りつづけたい伝説」を目の当たりにしたGW。わたしはたしかに大野雄大と中日ドラゴンズの選手たち、そして共に好投した阪神タイガース・青柳晃洋の姿から、感動と「勇気」を受け取りました。
感染症の世界的流行により、一時はプロもアマチュアも延期・完全無観客となった野球場。
あれから2年の月日を経て、球場に観客が戻ってきています。このGWにはとうとう前売り券が完売して、満員御礼という文字がビジョンに映し出された日もありました。
まだマスクは手放せないし、声を出して応援はできないけれど。この曲に歌われている「次の時代」はもう、すぐそこまで来ているのではないかと思うのです。
―――だから僕たちみんな、野球場へゆこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
この記事は椎名トキさんの企画に参加しています。好きな物事を思い切り語れるこの企画は、本当に尊い。トキさん、ありがとうございます!
削りに削ったけど、カロリーオーバー・文字数オーバーです。おデブをお許しください。ほんますみません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
実は4月にもこんな The 偏愛記事を書いたのですが、わたしの偏愛アイコンでもある大島洋平はいま、1軍にはいません。
4/27の阪神戦でのデッドボールによる怪我で登録を抹消され、5/8現在、ナゴヤ球場で調整しています。抹消からこの記事の公開日で10日。最短ならば今日から1軍登録が可能になります。果たして大島はいつ復帰できるんでしょう?
試合に出ていなくても規定打席を上回っている彼は、現在も打率.354、セ・リーグの首位打者のままです。わたしにとって彼のいないドラゴンズは、ちょっとだけ気の抜けたサイダーみたいなんですよね。
怪我の癒えた大島洋平選手の完全復活を、願ってやみません。

いいなと思ったら応援しよう!
