夏の笑顔をとりもどしたはなし
ともだちのお母様に
ご挨拶をさせていただいたかえり
なんであんなにすべての道で迷ったんだろう
きれいな瞳を濡らしたり深まらせたりする
ともだち2人とおはなしをして
風格のある
そしてチャーミングなお母様に御目通り許して頂いて
おなじ誕生日のこと
ちょっと誇らしくおもったりした
こんなに愛の深いカッコいいひとと同じだなんて
(世界的に痛みの日なので自分の誕生日はきらいだった
かこさとしさんのきょうはなんのひみたいな本が小学生のころ学童クラブにあって
みんな自分の誕生日をしらべていた
自分のページをひらいたときの
見開きいっぱいのきのこぐもの絵を忘れられない
それから第二次世界大戦をしらべ
なぜかオットーフランクさんと電話ではなすことになる
絵本をひらいた日から3年後)
おもいだした
25年前の夏を
祖母の四十九日に父が亡くなった
一夏に2人も家族を亡くすなんて
心配と迷惑しかかけない
祖母の時に震えるほど泣き続けたので
父のときにわたしは泣けなかった
息をとめて耐えるしかなかった
臨終前の人間の身体にことが大きく動く時間
ひとりでたちあってしまった混乱や恐怖を
のみこむしかなかった
加えて 亡骸を汚したひとに
真っ白な怒りで迷わずなにをするのか決めて立ち上がろうとした手首を
喪主である兄につかまれた
「ごめん」
葬儀の場は兄の生きる場所で
立ち去ることができるわたしの自由を
兄はもたなかった
生きるひとを守るしかなかった
涙も怒りものみこんで
頭をさげるしかなかった
むずかしい生き方と不義理を重ねたであろう
父が亡くなったことを
誰に知らせてよくて悪いのか判断もできなかった
小さな声で教えてくれたひとの言葉を信じるしかなかった
今度は逆に東京にもどるわたしは
形のわからない影を怯えずにおられなかった
相続放棄の手続きをすると
事務手続きはあっけなく簡略化される
待っていてくれた大切なひとたち
新しい仕事先の人たち
どれだけの心配と不安をかけたのか
大丈夫になるのかするのかわからないまま
走ってはしって
簡単におれた
流れでるものを
そうするしかないものを
もしいま耐えているひとがいたら
いつかゆるされるときに
かならず流してほしい
どんなに時間がたっても
忘れていたとしても
それは魂の深いところを傷つけつづけるから
わたしは逃げ続けて
20年以上も引きずって
葬儀も病院のシーンも
不義理を重ねても逃げ続けて
心を閉じて
結局手のつけられない形で溢れ出た
始末がわるい
大切さを失った直後の
ボロボロの心と疲れきった身体と
ハードスケジュールは
耐えがたいほど過酷だけれど
残された者のためでもある
その煩わしさや手間や時間を踏むことが
かすかにでも確かに
登るための階段になるから
どうかどうかと祈る
おばあちゃんとお父さんとさよならした日の
まんなかの哀しいわたしの誕生日は
愛にいきたカッコいいひとと同じで
気の遠くなるような25年もの歳月の間の
たくさんのたくさんのひとたちの
深い優しさに諭されて導かれて守られて
わたしは夏にわらうことを
とりもどしたよ
だから