思い出の味との再会と、また別れ
住みやすい街と高評価をいただいている福岡。
九州の中心であり、人口500万人の県だけあって、たいていのものがそろっている。
ドームツアーなら福岡はほぼ入るし、おしゃれの象徴マルイやパルコもあるし、タルトの有名店キルフェボンだってある。
ブラックホールと言われるだけあって、食べものはおいしく人はあたたかで住みやすい。
わたしも福岡好きやけん。
でも、東京にあったのにわたしの日常から抜け落ちてしまったものもある。
成城石井だ。
成城石井は九州に上陸してくれていない。
クマと同じく、関門海峡を渡れないようだ。
東京では大きい駅にならたいていあった成城石井。
外国の小洒落た食べものがあって、成城石井に入ると歩き方もおしとやかになっていた気がする。まぁそれは気がするだけだけど。
コンビニだと味気ないけど、デパ地下はやりすぎってときにちょうどいい存在で、上位の日常だった。
それが福岡にはない。
わたしは成城石井のクッキーが好きで、よく買っていた。
「アメリカンクッキー アソート」という、大きくて、甘くて、重たい、アメリカンな感じ(雑だけど分かりやすい表現だと思う笑)のクッキーが大好き。
おいしいってのもあるけど、これがわたしの思い出の味なのだ。
画像はこちらの記事からお借りしました。
思い出の味というのはステラおばさんのクッキー。あのクッキーは、島根に住む田舎少女にとっての都会の風が吹き抜ける味だった。
今でこそネット通販のおかげで田舎でもほしいものは買えるようになったけど、30年前は流通の格差が大きかった。
お店にないもんはない。
これだけだった。
そんななか、大阪の親戚がおみやげで買ってきてくれるお菓子は別格だった。
「ステラおばさんのクッキー」もその1つ。紙袋に直接クッキーが並んでいるのも、手のひらからはみ出るような大きさも、チョコチップやくるみがたっぷりなのも、すべてが初めてだった。
特に「コーンフレーク」という、コーンフレークとレーズン、くるみが入ったザクザク食感のクッキーが大好きだった。
就職して東京で暮らし始めて、駅を歩いていていい匂いがすると思ったらあのおばさんが!
迷わず買ったのはコーンフレーク。1番人気のチョコチップではなく、コーンフレーク。
わくわくしながら家で食べてみるとーーおいしいのはおいしい。でもなんか違う。あのカロリーの暴力が大人しくなって、上品になっている。
ステラおばさんのお店を見るたびに、あの味はもうないんだなぁ……と寂しく思っていた。
それから何年もして、アメリカンな見た目にもしかしたら? と期待して買ったのが成城石井のクッキーだった。
そして食べたときにわかった。感動の再会だった。
ーーあくまでもわたしの記憶のなかの味が変わっていて、ステラおばさんは今も昔も変わらないんだったら申し訳ない。
せっかく再会できた思い出の味なのに、成城石井がない福岡。
お店に行けないうちに販売終了になってたらどうしよう。また会えなくなる。
9月に東京に行く予定があるから、成城石井に行って久しぶりに再会せねば……!