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かなしくてさえ

光は思いました。
識るほどに悲しいと。

針穴を通るように、狭き門を潜り抜けるようにして着いた先は、これほどまでに苦悩に満ちていたのかと。
これまで、どうして知らずにいたのかと、悔いてしまうほどでした。

懐かしく、憧れる時空へと、降りてきたはずでした。
それなのに、降りてゆくほど、心ふたがれ、眼をふさぎたくなりました。

悲嘆も苦悶も、それらはすべて、もともと光だったものでした。
いえ、いまでも変わらず光なのです。
曇り、濁り、汚れ、穢れて、光をなくしていたのです。

光は涙しました。
いつのまにか涙となって流れていました。
いたわしくて、泣いたのです。
いとおしくて、泣いたのです。

「どうか、どうか、思い出して。
あなたは光、わたしの光。
わたしは光、あなたの光」
光は光をなくした光たちに呼びかけました。

はらはらと、光の涙はこぼれ落ち、さやさやと、涙の光は沁みとおっていきました。

どれほどの辛苦でしょうか。
深みへと降りてゆくほど、真実を識れば識るほど、やはり、光はかなしくなりました。
けれども、かなしくてさえ、しあわせでした。
不可思議にも、かなしくてさえ、そこには、歓びもあったのです。

光は思いました。
光とは、これほどまでに、引き受けるものであったかと。
わたしとは、これほどまでに、寄り添えるものであったかと。

もとはひとつの同じもの。
闇や澱、罪や咎、障りもすべて、耀けるものでした。
それらは、光に気づくと、驚きました。
ほどけ、ほころび、喜びました。
再び逢えて、共鳴し、己を思い出しました。

光は安堵し、ふと、思いました。

「わたしは針穴のような僅かな隙間を通ってきた。
他の存在と同じく、真実だけが通れる道を。
ほんの一条しか通れない孤独なる道だった。

わたしはかそけき淡きもの。
それでも、かすかな光の糸だ。
深いところへ射し、きざし、真のよすがを結ぶのだ」

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