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ピーナッツバター・ファルコンの不思議な心地よさ

映画の途中じゃなくて、エンディングでなぜかじんわり涙がにじんだ映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」。なんか最近疲れてるな~って人はぜひ見てほしい。おすすめ。

あらすじ:家族に捨てられ、老人ばかりの介護施設で暮らすダウン症のザック。ビデオで何度も見たプロレスラーの学校に入るため、施設を脱走する。

仲の良かった兄を事故で亡くし、投げやりな日々を送っていた漁師・タイラーは、漁の獲物を盗んでいたことがばれ、網に火をつけ、ボートで逃走する。

偶然そのボートに隠れていたザック。タイラーは、ザックをプロレスラー学校まで送ってあげることに……。

善悪を決めるのは魂

施設の人に"ウスノロ"と呼ばれていたザックは、「ぼくはウスノロだからヒーローにはなれない」と言うんだけど、タイラーが「善悪を決めるのは魂。お前はヒーローだ」と語りかけるところが一番響いたなぁ。

"ダウン症だから"を特別視しない、ウェットなやりとりのシーンも淡々と描かれていて、"お涙ちょうだい"みたいな筋立てじゃないのがすごく心地よかった。なんでなんだろう、この雰囲気は……と思って調べたら、ザック役の俳優ザック・ゴッツァーゲンが映画の発起人で、この映画の脚本も書いていると知って、なるほどってなった。

ザック・ゴッツァーゲン(ザック役)
1985年生。幼いころから演技に夢中でドレイフォーズアートスクール演劇科を卒業。その後、サザン・ダンス・シアターに俳優兼ダンサーとして13年在籍。現在は非営利映画製作団体に所属し、インディペンデント映画などに多数出演している。障がいをもつ人々の芸術活動を支援する団体に積極的に参加しており、18年世界ダウン症財団で活動が評価された人に贈られるクインシー・ジョーンズ賞を受賞した。本作が長編デビュー作となる。

映画に寄せられた作家・岸田奈美さんのコメントにもじーんとした。

ダウン症の弟と過ごした日々が重なった。この映画は、私がずっと、誰かに言ってほしかった言葉であふれていた。人の善悪を決めるのは、障害じゃない。魂なんだ。岸田奈美(作家)

90分ほどのなかに、やさしい気持ちやキラキラした心がちりばめられていて、観ているこっちが思わず笑顔になるロードムービー。わたしもピーナッツバターを塗りたくった魚を食べてみたいな~。

「書類は任せるよ 俺らは人生を楽しむ」。こんな風に自由な心で生きていきたいなぁ。疲れている方、ぜひご覧あれ。

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