ナウシカを歌舞伎に? 豪華すぎてクラクラした昼の部
新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」。
漫画のナウシカが歌舞伎になるというニュースを目にしたときからずっと、「どうやって!?」「どんな舞台になるんだろう」、とにかく見たくてたまらなかった。
1982年から13年もかかって完結した漫画ナウシカ。最初に読んだのは確か高校生で、全巻セットを初めて「大人買い」した作品でもある。それまですり切れるほどビデオ・DVDで観ていたわたしは、雷に打たれたような衝撃をうけた。1巻の途中でアニメ版の物語が終わってる!こんな続きがあったなんて…!!
尾上菊之助が5年ほど前から歌舞伎で演じてみたかったんだそう。映画版ではなくて原作漫画の全7巻なんて、すごい挑戦すぎるでしょ…!
先行抽選の情報があれば即応募し、あらゆる機会で申し込んで、ようやく手に入れたひとり分のチケット。まずは「昼の部」を見にいってきました。(※「これから見る!」という方は演出に言及しているのでご注意下さい)
ナウシカの世界がちゃんと3Dになってる!
まず開口一番の感想は「す、すごい豪華だったな…!」に尽きる。
昼の部は、序幕「青き衣の者、金色の野に立つ」・二幕「悪魔の法の復活」・三幕「白き魔女、血の道を征く」の3幕。
序幕でほとんどアニメの内容は描き尽くされる。この序幕の舞台美術もとっても豪華で、リアルな王蟲や腐海の世界、ガンシップやナウシカの実験室までちゃんと再現されていた……。
しかし戦闘シーンやメーヴェの滑空、王蟲の怒りの群れをどんな風に表現するのだろうと思っていたら、薄い幕にアニメのように映像が映されたり、遠近感を出すためにメーヴェに乗ったナウシカを子役にやらせたり(音声ガイドによると歌舞伎の昔ながらの手法なんだそう。面白いこと考えるなぁ)。
最も「おぉぉ…!」となった演出が、目の赤い王蟲が描かれた垂れ幕を下げ、それに赤い光を重ね合わせるもの。幕が微妙に震えて、ライトとの絶妙なズレで、王蟲の地響き・振動さえ伝わってくるような。ほんとすごい。
ナウシカが助けた王蟲の幼生とどう分かり合うんだろう…というところも、〝擬人化〟して違和感まったくなし。なるほど考えたな~。
↑普段は歌舞伎の3色の幕(定式幕というそう)も、今回特別に制作されたナウシカタペストリー仕様になっている。
ナウシカの世界が、しかも歌舞伎という手法で、こんな風に3Dになるなんて。〝新作〟の歌舞伎を観るのは初めてだったんだけど、すっごく面白かった。
クシャナ殿下に仕えたくなるレベル
歌舞伎には全然詳しくないわたしでさえ、演者陣もめちゃくちゃ豪華なのが伝わってきた。
ナウシカ・尾上も青き衣が似合って、メーヴェ上のたたずまいも含めてステキだったのだけど(ちょっと弱々しい感じがあったのはうーん)、何よりも中村七之助演じるトルメキアのクシャナ殿下がかっこよすぎて…!!
初めて「あークロトワになりたーい」と思ったよ。笑
クロトワと、城おじミトの再現度は半端なかった、まんまアニメから出てきた感じ。
そして二幕の、王蟲を培養している水槽を壊すシーンには圧倒された!
ユパ(尾上松也)・明日ベル(尾上右近)の立ち回りや見得がかっこよかったのはさておき、水の量のはんぱなさ……!!!
二人に切られた虫使いがどんどん水たまりにダイブして、ステージ上に水しぶき上がりまくり。(最前列の人がビニールでしぶきを避けているのも見えた笑)
これも歌舞伎では「本水」というリアルな水を使う演出なんだそう。歌舞伎っていろんな演出があって面白いなぁ。
ほかにも、久石譲のナウシカの楽曲が和楽器で奏でられ、もの悲しい雰囲気をより一層高める……(子どもの頃のナウシカが王蟲を取り上げられたところや、カイがたおれたシーン…思わず涙ぐんでしまったよ)
土鬼が戦士たちを鼓舞する舞踊や太鼓、ミラルパのまがまがしさなど、リアルならではの迫力も伝わってきて、ほんとに大満喫した。
そして三幕目のラスト、まさかあそこからナウシカが登場するとは…!
昼の部しか見られなかった人も大満足なんじゃないだろうか。今から「夜の部」が楽しみすぎる。そして豪華なパワーに圧倒されまくったので、昼夜を通しで観たら、体力もたなかっただろうな、と思っている。笑
ちなみに観られなかった方、2月に映画館での特別上映があるそうですよ…!わたしももう一度観ようかなと思っているぐらい。映画版で役者の細かな表情まで観てみたいなぁ~。
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