あいトリレビュー① アートで〝社会課題〟をとらえなおす
色々色々あったあいちトリエンナーレ。個人的には前回のあいトリよりもさらに充実していて考えさせる展示も多く、印象に残ったトリエンナーレでした。「情の時代」というサブテーマどおり、現代アートを通して、自分はこの社会問題をどうしていきたいのか、捉え直すきっかけになったなぁ。
芸術監督の津田大介が掲げたテーマ「情の時代Taming Y/Our Passion」には、「情報によって我々の感情が煽られ、それによって翻弄された人達が、今世界中で分断を起こしている。世界を対立軸で捉えるのではなく、この世界に存在するあらゆるものを取り上げられるアートの持つ力で、人々の情けに訴えることによって、問題解決の糸口を探っていきたい」という思いが込められています。(愛知県美術館HPから)
気に入った展示をメモとして残しておきます。まず①は愛知芸術文化センター、名古屋市美術館の展示を中心に。
①愛想笑いをしているのは誰?
二度目に訪れた時も、じーっくり観たのが、アンナ・ヴィットの「60分間の笑顔」。
60分間、カメラに向かって笑顔でいてください、といわれた8人。顔がピクピクしたり凝り固まった手をのばしてたり……
右から3番目のお兄さんは、もはや疲れたのか飽きたのか笑おうとしないし。(まぁ現実世界にも、愛想笑いすると死んじゃう病の人いるしなぁ。笑)
真ん中のおじいさんは、魂を抜かすことができるのか?ってぐらい一定の笑顔と体勢のクオリティを維持していてやばい。でもよくみると目が虚ろ…
これって合わせ鏡かもね。普段、無理やり愛想笑いをしてるのは誰なんだろ。
自分の機嫌をとれる人でいるのと、誰にでもヘラヘラ作り笑いを浮かべているのは一緒じゃないよな~とも思ったり。
②人っ子ひとりいない違和感
「次の展示は映像です」という予備知識だけで、暗い部屋に入って見始めると……
ただひたすら無人の都市の映像が流れる。
「え???なんで人がいないの? CG?? 漢字ってことは台湾か中国の街? でもエレベーター動いてたな…あ、鳥も飛んでるな。人だけ消したのか??そうだとしたらすごいクオリティだな…」
ってとまどいながら鑑賞することに。
これは台湾・台北を撮った袁廣鳴さんの「日常演習」。
部屋を出ていくときの解説で、台北で年に1度、日中30分間、屋内に退避する演習が今でもあると記してある。……知らなかった!!
こんなことが毎年あったら戦争を身近だと思うのか、逆に慣れてしまうのかなぁ。うーん
③the没入感!!!
2回目の訪問で、見逃していた伊藤ガビンさんの「モダンファート創刊号」も観られた!プロジェクションマッピングを愛する伊藤さんが、没入感まんさいの「雑誌」をつくった、というアート。
たしかに没入感はんぱなし。シャチを目で追ってしまう…
現代アートへの皮肉っぽいところも随所にあり。入場してすぐの来場者への注意アナウンスにも吹き出してしまった。「このアートで不快に思う方もいるかもしれませんが、それがアートだから」的な感じだった。しっかり覚えてないのがくやしい~
ホームページの伊藤さんの言葉もいいな。
雑誌は書籍のように残り続けることが目的ではなく、現れては消え、現れては消えていく。この空間も展示期間が終われば消えていきます。それぞれの人生と同じように。(モダンファートHPより)
④ぞわぞわするけど見ちゃう絵
あとやっぱり二度目も食い入るように観たのがこの作品。
ミリアム・カーンの【美しいブルー】。
ユダヤ人の彼女。ビキニでの原爆実験の映像に衝撃を受け、同じユダヤ系の研究者が核兵器開発に関わったことに思いを巡らせ、絵筆をとってきたそう。
溺れているのは、海の向こうに自分たちの逃げ場所があると信じてボートに乗った難民なのか…。美しいコバルトブルーとの対照がとても悲しい。
⑤果てしなく長い作業時間……
これはひたすら根気がいるな……とまじまじ見入ったのが、今村洋平さんの作品。
版画みたいな「シルクスクリーン」という手法で、インクを重ねて、重ねて、重ねている作品。
この制作過程が映像で流れていたんだけど、「ほんと、根気が要るなぁぁぁ」という一言に尽きる。できあがりをちゃんと予想してシルクスクリーンを刷っていくのもすごい。
名古屋の街中と豊田エリアのことはまた引き続き書こうっと。