詩『空腹なライオン』

じわっと舌に突き刺すと
鈍い痛みでっかち頭で感じるんだ
よっつ鋭く尖った僕の歯 
牙ほど威力はない白い歯

いつの間にか失くした闘争心
奮い立たせてくれたのは誰?
遠くで嘲笑う声が聞こえたから
反射で脚が動いてしまったんだ
誰にも届かないぐらい遠いところへ行こうってね

思うままに走ればいいじゃない?
最初は1人で草むらかきむしるけど
そのうち誰か着いてきてくれるでしょ
来なきゃ来ないでそれもいいし

いつの間にか細くなった僕の脚
血の管浮き立つほど力を込めて
乱暴に大地を蹴りあげていくのさ
フニャフニャの草のカーペットの上を
グジャグジャの泥だまりの中を

ああなりたい 
こうなりたい
あれがほしい 
これがほしい
あのこがほしい 
そのこがほしい
その全ては口だけかい?

ほしいものをほしいと言って
願い事を必死に願って何か悪いのかい?
手にしたものだけが言えるお決まりのフレーズ
『諦めたらそこで終わりだ』

僕は敢えてこう言ってやるんだ
目の前の血肉のすべてを欲しがってるってね

そうだよ
思うままにすればいいじゃない
目の前の景色全て塗り替えるけど
それを綺麗と言ってくれる人もいるでしょ
いなきゃいないでそれもいいし

思うままにしてもいいじゃない
この荒野の向こうはまだ知らんけど
越えた日にゃ何か見えるでしょ
ないならないでどうにかなるよ

そうだよ それでいいんだよ
そうだよ それがいいんだよ



[了]



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