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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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#人生

詩『言葉たちの交差点』

あの時の言葉がスッと消しゴムで消せたら って想像してる自分がいるんだ 消せてしまう時点で言葉ではないのに 考えてもしょうがないことをグルグルさせてる 本当はもっと素敵な選択肢が いくらでもあったはずなのに 一番選んではいけないルートを その時の心は選んでしまった 時が過ぎればこころも傷んでゆく 間違えた場所はわかってる でもそこまで戻れない 足はただ前に歩いていくだけなんだ この道はすべて一方通行 引き返すルートなどあるはずない わかってるんだ、そんなことぐらいは こ

小説『日向と日陰』

昼夜を問わず眠り続けることが、私はよくある。 ステージで上手く活躍できなかった時や、 激しいレッスンで、心と体をすり減らした時や、 心なき声を浴びせられた時。 どんなに追い詰められても、眠っているときだけは、自分がひとりであることを実感できて、安らぐのだ。家に帰って、羽毛布団の中に潜っていると、まるで自分の体がすっぽりと大きな麻袋の中に詰められているような気分になって、このまま誰かに海に沈めてほしくなる。 世界は全て日陰と日向でできている。 沢山の人の注目を集める華々

詩『春と青を繫ぎ合わせた天才』

大画面のなかで誰かが誰かを愛して 誰かと誰かがぶつかり合って泣いて そして誰かが短い生命を廃業していく この季節の感動は大量消費されていく 彼らは彼らなりの人生があるさ 真似することは出来ない特殊な状況下だ 埃被った藍の制服捨てて 堅く馴染んだ礼服身に付けて 憧れに染まった髪は黒に戻して 誰かの期待にはそれなりに応える 僕らの行く先には 希望しか残らないんだ 進む方角は 日が登る前方のみだ 辞書なんて引かない頭の足りない季節を 難しい言葉で例えるのは野暮だと思う ア

アイドルマンガ『湯島坂四十六回転』第三話 #ジャンププラス原作大賞

この作品の詳細はこちらのURLから。 戦友の澄を失い、心に穴の開いたままの櫻子。 しかし、それとは裏腹に櫻子の人気は一気に熱を帯び、2ndシングル「月に照らされて、キミと」のセンターに櫻子は抜擢される。しかし、櫻子の仕事量が増えていく一方で、真子は冠番組での姉妹ネタ以外ではなかなかその才能が開花することがなく、じりじりとくすぶるようになってきた。櫻子も真子も、満たされない想いを抱えながらアイドル生活を送ることとなった。 そんな折、「最近湯島坂に影響されて作詞を始めた」と

アイドルマンガ『湯島坂四十六回転』第二話 #ジャンププラス原作大賞

この作品の詳細はこちらのURLから。 湯島坂461stシングル「幸せの在り処」の発売が決定する。 センターは湯島坂きってのビジュアル担当・白川澄。 櫻子と澄は、学生時代の親友であり、セレクション時代からの最大の戦友だった。その縁もあり、櫻子は大いに喜んだ。澄のメディア露出やメンバー一丸となったプロモーションにより、湯島坂の人気にじわじわと火が付きつつあった。 しかし、シングル初披露ライブの直前、澄の致命的なスキャンダルが報道され澄は無期限活動休止に追い込まれる。MVの

アイドルマンガ『湯島坂四十六回転』第一話 #ジャンププラス原作大賞

この作品の詳細はこちらのURLから。 湯島坂46結成。 その後、冠番組「ユシマ・ユニバーシティ」が放送開始。 第一回の企画からいきなり【第一回学力テスト「湯島坂46初代・NOT知性クイーン」決定戦】が放送され、櫻子が初代知性クイーン、真子が初代NOT知性クイーンに決定する。そこから真子が櫻子に一方的な尊敬の念を抱くようになる。 元来、孤独な性格だった真子は櫻子の包容力、そして知性的な姿に女性らしさを感じており、それからしばらく後の「バレンタインデー理想の告白選手権」企画

アイドルマンガ『湯島坂四十六回転』プロット #ジャンププラス原作大賞

あらすじ2019年「知性の香りがするアイドル」をコンセプトとした「湯島坂46」が誕生。キャラ重視の現在のアイドル路線を脱却、知性や上品さを演出できる「ワンランク上のアイドル」を目標とした。 主人公は湯島坂46の「聖母」こと篠宮櫻子と、自由な妹的存在の佐藤真子。一見すると水と油のような二人だが、真子の『お姉ちゃんが欲しかった』という何気ない願望から発展し『まこさく』というペアでファンの間で定着していく。 スキャンダル、中傷、仕事格差。様々な問題と正面から向き合い、葛藤する二

詩『雛鳥』

いつも心の奥底で思っていた 誰かが僕を変えてくれるはずだと その時がいつか来るはずだと ひゅっと視界を横切ったツバメ ホームの上の巣に溜まって 優しい営みをそこに築く 口を開けていても エサは入りやしない 待ち望むものは自分で手にしなければ わかっていても 飛べない 飛ぶだけの勇気が 僕にまだない ぎこちないストロークで腕を揺らす それはまるで飛べない雛のように まだ飛ぶことを知らない僕なりに なにか一歩を踏み出すように 口を開けてばかりいた 僕は雛鳥のまま 空想ばか

詩『理由』

どこまで行っても私たちは 川岸のように平行線で 海に辿り着くまでひとつになることはない 心をスキャンして気持ちを読み取れたら この世界に恋という字が生まれなかった 言えない気持ちを四苦八苦して 見えない未来に手を伸ばしてく もう遅いって言ったって知らない 誰にも引き留める権利はない 暗がりを彷徨う君を引き連れ ここではない何処かへ導いていきたい 何よりも強くなるために 君の側に居ることの意味を見出すために 例えば僕は桜の木で そんで君は楓の木 互い半周遅れで巡り合うよ

短編小説『ロックバラード』

私の夢は二度と叶うことがないと分かった日。 私は家で一日中泣き叫んでいた。 堅く閉ざされたドアの前で、母親は何も言わず黙って立っていた。私が泣き止む朝まで、側にいた。私が目を腫らして部屋の外に出てくると、壁にもたれかかったままスヤスヤと眠る母が居て、思わずちょっとだけ笑みがこぼれてしまった。あの日々に、私は一体何を見出せばいいのだろうか。少なくとも、まだ幼い自分にその答えはすぐに出せなかった。 フェリーは苫小牧の港へ着いた。 まだ夜も明けきれぬ冷たい北の町には、真夜中程

¥300

詩『花を飾る』

家の窓に萎れた花ひとつ 水のなき瓶に刺さりけり 色の無い薄汚れた花弁一つ はらはら鮮やかに枯れている 輝きを失った生活 振り子のように 馬車馬のように AとBの往復続ける毎日 ときおり人はそれを憂いて どこか遠くへ身を放り出す けれど己に繋がれたる鎖の長さを知り かえって虚しい感情を沸き立たす 瓶を洗う。 ほこり取れて輝き取り戻す。 透き通るその体に映るもの 彩りを少し忘れたひとりの大人。 僕を洗う。 汚れ取れて光取り戻す? 薄肌色のその体に宿すもの 幸福を問う疑問

詩「衛星軌道」

「君が好きだ」という陳腐な言葉で 僕はこの旅にピリオドを打った ふたりが描いたふたつの線は この空に確かな軌道を描いてきた 褪せたシャツでも外に出れた 夏のふざけあった坂道 埃っぽいコートをびしょ濡れにした まだ誰もいない雪野原 覚えてる 覚えている 昨日のことのように思い出せる 瞳のカメラと頭のメモリーでいつでも呼び出す きょうも、あしたも、そのさきも きっとこの軌道は伸びていく 穏やかな空の下を電車は行きかう 無数のカメラとフィルムを満載にして その一つ一つに無限の

小説『introduction』

「じゃあ、定期ライブお疲れ様でしたー!」 グラスが一斉に高鳴る。天王寺にある古ぼけた居酒屋。いつもサークルでライブを開催した後、決まってここで打ち上げを行う。今夜も、狭い座敷に部員がすし詰めになって酒を飲みかわす。 俺はいつも絡むサークルの仲間と話す。 「・・・どうなんだよ?卒業したらどうするんだ?」 「んー、まあ、音響関係の会社で働くかな」 「バンドは?」 「無理無理。プロで食っていけるほど才能ないし」 「けっ、お前もそれぐらいの奴か・・・」 俺は思わずがっかりしてしま

¥300

詩『STONE』

心の向くままに歩いていたら いつの間にか方角を見失ったみたい 仕方ないから携帯電話でキミを呼んだ すぐに来てくれるって 1時間はかかるけど 気づかないうちに僕らの前を 通りすぎていく優しい日常 迷っていられるこの時間も ひょっとしたら幸せのカタチかもね 何となく、深い理由はないけれど 道端の石ころ蹴ってみた カラカラって軽薄な音して転がってく石ころ 何の迷いも躊躇いもなく 誰かの力で前へ前へ押し出されていく 僕らもまた そうであれたらなぁ 進むんだ ただ真っ直ぐに それ