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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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2022年4月の記事一覧

詩『僕は、いま』

浅い眠りの中で 嫌なことを思い出した すごく昔の 僕のトラウマ 戸惑うばかりの僕をそのままにして ここから飛び出した初恋の人 冷蔵庫の水を鬱陶しそうに飲む彼女 あの人と似ても似つかない今の彼女 睡眠すら邪魔される僕の生活 知らぬ間に通りすぎていった時間は 僕らから素直な気持ちを奪っていった ぶつかるばかりの本心は磨り減って 辻褄合わせの言葉で取り繕ってる ねぇ、こんなはずじゃなかったのにね もっと楽しいと思ってたよね 僕はいま 何かを伝えたい 僕はいま あなたに伝えた

小説『One is not born a genius, One becomes a genius.』

One is not born a genius, one becomes a genius. 人は、天才に生まれるのではなく、天才になるのだ。 スカイブルー色のガラスでコーティングされたその塔。学生の頃からこの場所が大好きだった。暇を見つけてしょっちゅう登りに来ていた。登るとまるで、自分自身も空の一員になってしまったような、そんな気分になる。それが好きだった。上層階へ向かうエレベーターは全面硝子張りで、訪れる人々を瞬く間に天空の世界へ連れて行ってしまう。生憎、今日は激しい

詩『どこまでも連なってく世界』

人影の少ない真夜中の信号機 根元に手向けられた小さな花束 反射的に手を合わせてしまう僕は まだこの命が惜しいと思う きっとこの場所の住人は ここに閉じ込められたままなのだろう 仕掛けられた時計が止まった瞬間 彼は何を思ったのだろう 雨上がりの朝 水溜まりに足を突っ込む子供たち ビチャビチャになる靴下と小さな波 幼い心が躍動する音がする 想像もつかないほど広がっていく 鼓動と鼓動の重なる輪 その輪の中で新たな鼓動が生まれ どこまでもそれが連なってく この広く 広く 広く

詩『keep sharing』

ヘトヘトになった金曜日の帰り際 駅の改札でチーズタルトを売ってた レアなやつと焼いたやつ 無性に食べたくなったけど ひとりだと多すぎて躊躇った 多分、胃がもたれてしまう しあわせは 何を食べるかじゃなくて 誰と食べるかに左右されていて ひとりで食べるカップそばは味気ない サクサクの天ぷらも欲しいと思えない 七味を山ほどかけて 無理やりごちそうさん このままでいいのかな? でも このままでいるしかないんだな いつでもみんなは  こころを半分こにできる たのしいことも かな

詩『空腹なライオン』

じわっと舌に突き刺すと 鈍い痛みでっかち頭で感じるんだ よっつ鋭く尖った僕の歯  牙ほど威力はない白い歯 いつの間にか失くした闘争心 奮い立たせてくれたのは誰? 遠くで嘲笑う声が聞こえたから 反射で脚が動いてしまったんだ 誰にも届かないぐらい遠いところへ行こうってね 思うままに走ればいいじゃない? 最初は1人で草むらかきむしるけど そのうち誰か着いてきてくれるでしょ 来なきゃ来ないでそれもいいし いつの間にか細くなった僕の脚 血の管浮き立つほど力を込めて 乱暴に大地を蹴

詩『幸福成分配合リキッド』

僕たちにはいろんな愛情の表し方があって そのひとつひとつを味わうたびに こころにポタポタと溜まっていくんだ 優しさという名の香水がね 手首に吹きかければ 砂糖にも似た甘い香り漂う 胸の白い肌にすりこませれば じんわり心臓の奥底が暖かくなっていく きょうもそうやって みんながくれる言葉をすこしずつ あなたのくれる言葉をすこしずつ 僕は綺麗な心の瓶に貯めていくんだ 素敵な匂いのする 優しさのリキッドを 目が合うたびに どこかですれ違うたびに あなたが僕にくれる秘密のサイン

詩『instant camera』

君から見える世界 僕から見える世界 どっちの方が綺麗とかそんなんじゃない どっちの方が鮮やかとかで比べられない それぐらい違って それぐらい面白い 君から見えるあの人と 僕から見えるあの人も どっちが大人とかは決められない どっちが魅力的とかで測れない 君が想ってる未来 僕が想ってる未来 もしかしたら違うかもしれない でも少しずつ話して擦り合わせればいい 君は君のレンズで目の前を見つめて 僕は僕のレンズで同じ景色を見つめて それ以外にはなにもいらない ややこし