小説『THE ANGEL FLEW OVER DOWN TOWN』
交わしたはずのない約束に縛られ
破り捨てようとすれば後ろめたくなるのはなぜだ?
芯から冷える12月の末の夜。東京は爆弾低気圧の襲来によって記録的な積雪を観測し、その混乱は夜になっても続いていた。自分ひとりしかいない1DKのアパートの部屋の中で、俺は愛用の白い携帯ラジオを付けた。周波数のダイヤルはTBSラジオにずっと合わせっぱなしにしている。薄いノイズが混ざりながら誰かがリクエストした「drifter」が流れている。でもそれは、キリンジが歌った原曲の方じゃなくてBank B