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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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2022年3月の記事一覧

詩『シャンプー』

愛が終わる瞬間って どんな感じなんだろう 漂い出す空気から何かを察するのか 何のサインもなくあっけなく幕が下りるのか 察しの悪い僕には 想像することもできない 僕らの毎日は 何事もなく過ぎていく 昨日をほぼオートリバースするかのように 綴られていく生活 そこにある 洗面所のゴミ箱に 封が開けられたテスターが捨ててある 僕は溢れそうになってるゴミ袋の 口を結んで捨てておいた ふいに君が横を通りすぎて 柔らかな髪がゆるりとなびいた 鼻を突いたその香り いつもと違う君を僕に

詩『新大阪駅26番線ホーム』

「またどこかで」を言おうとして ドアが閉まってしまったんだ 別に言いたくなかったわけじゃない 勇気がなかったわけでもない 君に恐らくもう会えない未来を 心が認めたくなかったんだろうな 2人が選んだ片道切符だから それ以上は何も言わないって決めていた 肌寒い朝のホームに立つ君の手を そっと優しく握るだけにしておくんだ もっと遠くまで彼女を連れて行って いっそ遠くまで彼女を連れて行って 僕が影も形も見えなくなるぐらい遠くまで 彼女の未来よりももっと明るい方へ ねえ、君が幸せ

詩『STONE』

心の向くままに歩いていたら いつの間にか方角を見失ったみたい 仕方ないから携帯電話でキミを呼んだ すぐに来てくれるって 1時間はかかるけど 気づかないうちに僕らの前を 通りすぎていく優しい日常 迷っていられるこの時間も ひょっとしたら幸せのカタチかもね 何となく、深い理由はないけれど 道端の石ころ蹴ってみた カラカラって軽薄な音して転がってく石ころ 何の迷いも躊躇いもなく 誰かの力で前へ前へ押し出されていく 僕らもまた そうであれたらなぁ 進むんだ ただ真っ直ぐに それ

詩『想いはまるで春のように』

人生にはどうにもならないことが たまにやってくるってパパが言ってた 私にはたぶん、それが今来ている あなたを目の前にして、今来ている 彼はそれをロマンチストのやることだって 半分笑いながら言ったの だから表で笑っておいて、裏でそのツラを殴った 誰にもこの気持ちを笑われたくなかった 君だってあるでしょう?そんな気持ちになることが 綴り書きの宛名を読まれる恥ずかしさより 堰を切りそうな言葉を正直に吐露したい 自分の理性が首をもたげてくる前に ギリギリで書ききってやるんだ 家

詩『usagi-orchestra』

柔らかい床の上で横になるうちに いつの間にか眠りについていたみたい ボクとキミは不思議な世界の旅人になっていた 地面すれすれを飛んでいく飛行機 どこまでも続く緑色の地平線 不思議な歌声のウサギたち 手にしていたのは扱いきれぬ謎の楽器 出逢ってしまったんだ 最高の仲間たちに ボクらは即席の楽団 ハチャメチャなリズムと楽し気な音程で ダレにも読み取れない曲を奏でようぜ 夢が楽しけりゃ それでいい そこらじゅうのぼろ切れ集めて大きな気球を作ろう それに乗ってもっと遠くへ飛んで

詩『快晴』

晴れた空を見て泣きそうになる 君の事を思って 晴れた空を見て泣きそうになる 誰かのことを思って 晴れた空を見て泣きそうになる 今までの自分の日々を呪って 分断された金網の向こう 家の瓦が地面に叩きつけられて めちゃくちゃな世界が広がっている こことたった1メートルもないのに地獄みたい 水場のコンクリートに割れ目が入って そこから黄色いタンポポが生えていた いつか彼らも頭から綿を生やし 次の命をこの街に産み落としていく 晴れた空を見て泣きそうになる 弱虫な僕の心を笑い

詩『希望とはどんな色をしているの』

ねぇ、希望くん いつも君にはとても感謝しているんだよ いつもそばにいてくれて本当にありがとう ねぇ、希望くん 君にどうしても聞きたいことがあるんだ ちょっとおかしいけど笑わないで聞いてほしいんだ 誰かを愛する気持ちはピンク色 覚悟を決めて闘う闘志は赤色 どうにもならない悲しい気持ちは青色で 何かを企む悪い心は真っ黒だよね 僕はいつも思うんだ 希望とはどんな色をしているだろうかと 目に見えなくて、顔にも現れなくて いつもしたたかで優しい顔をしていて いろんな色で僕らの心

シナリオ『ニュース』

※これは複数人での公演・演劇練習を想定したシナリオ作品です。実在の企業・人物とは一切関係ありません。役名は特に設定していません。演じる人間の本名ないしは芸名で演じてください。 ・・・・・・・・ 【夕方のニュース番組。何個目かの項目が終わり、キャスターが中継リポートに振るところ。暗いニュースが続き、ここからは明るい中継リポートが始まるところである】 キャスター 「・・・ありがとうございました。では、今日のリポートです。神様に【神頼み】をした経験、誰もが一度はあるのではない

短編集『初期微動』

「忘れ得ぬ日々」 朝の大通り。 港の冷たい風が、ランニングで熱くなる体を冷やしてくれる。いつも走る決まりのコース。もうすぐ大きな橋に差し掛かる。一番厳しい坂道だ。いままで一度も止まらずに渡れた事は無い。   私はひとり、自分と戦っていた。   「いやーかっこいいなぁ・・・」 「誰が?」 「サッカー部のキャプテンで、容姿端麗、正確抜群。勉強も出来る。 漫画の主人公かってぐらいの好青年?」 「ああ、サクライ君?すごいよねぇ~」 「でも私たちとかじゃ相手にもしてもらえなさそう・・

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詩『ideal』

天気のいい日には部屋の窓を開ける 外と内を一緒にまぜこぜにして 窓辺に座って考え事をしよう お湯が沸くまで考え事をしよう この間新しい服を買ったんだ 君が気に入ってくれそうな可愛い柄のシャツをね もうすぐ届くから見せてあげるよ 似合ってるってたくさん言ってほしいんだ うれしいときはふたりがいい どんなことでも君が褒めてくれるから 君がもっと僕を嬉しくさせてくれるから たのしいときもふたりがいい 何でもない日々でも楽しくなるから 毎日を君と僕で特別な日に仕立てるから か

小説『THE ANGEL FLEW OVER DOWN TOWN』

交わしたはずのない約束に縛られ 破り捨てようとすれば後ろめたくなるのはなぜだ? 芯から冷える12月の末の夜。東京は爆弾低気圧の襲来によって記録的な積雪を観測し、その混乱は夜になっても続いていた。自分ひとりしかいない1DKのアパートの部屋の中で、俺は愛用の白い携帯ラジオを付けた。周波数のダイヤルはTBSラジオにずっと合わせっぱなしにしている。薄いノイズが混ざりながら誰かがリクエストした「drifter」が流れている。でもそれは、キリンジが歌った原曲の方じゃなくてBank B

¥300