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小説とか詩とか

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瑞野が書いた小説や詩をまとめています。短編多め。お暇な時にぜひどうぞ。
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2021年11月の記事一覧

小説『That was very fresh to me.』

風の音が聞こえる。 ひゅうひゅう、ひゅうひゅうと。 私の胸を、足を、肩を、頬を、風はするりするりと掠めてゆく。渓谷を勢いよく駆け下ってくる混じりけのないピュアな空気。美味しい空気という手垢の付いたフレーズを使うのが相応しくないぐらいに、とても美味しい。 来た道を振り返ると驚くほど急な下り坂が伸びていた。登っているときは実感しないものだが、想像以上に厳しい山道を登っていたことを知る。普段仕事をしているときは完全なデスクワークでちっとも体を使わない。山に行かないうちに随分細身

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