小説『That was very fresh to me.』
風の音が聞こえる。
ひゅうひゅう、ひゅうひゅうと。
私の胸を、足を、肩を、頬を、風はするりするりと掠めてゆく。渓谷を勢いよく駆け下ってくる混じりけのないピュアな空気。美味しい空気という手垢の付いたフレーズを使うのが相応しくないぐらいに、とても美味しい。
来た道を振り返ると驚くほど急な下り坂が伸びていた。登っているときは実感しないものだが、想像以上に厳しい山道を登っていたことを知る。普段仕事をしているときは完全なデスクワークでちっとも体を使わない。山に行かないうちに随分細身