小説『We laugh in the innocent world』
長い夢を見ていた。
テレビから流れてくる、ビッグアーティスト死去のニュース。悲しみに暮れるファン、旧友からのコメント、通夜、葬儀、お別れの会、出棺。
「日本の音楽シーンを駆け抜けた人物が、また一人旅立ちました」手垢がつくほど繰り返されてきたアナウンサーのコメント。
そこでぷつりと場面は切り替わる。
そのアーティストのライブの中に俺はいた。なぜ死んだ人間のライブを俺はいま見ているんだろうか、そんな大きな疑問は、観客から湧き上がる大歓声と乾いたギターのリフにかき消されてい