『スナイパーの意外な使い方』
「本当に無かったの?」
インドの女性首相・ニシャは秘書に尋ねた。
「申し訳ありません。不注意で在庫を切らしておりました」
「今すぐ買って来て!」
「小間使いは既に出しましたが、もう時間が……」
ニシャは眉間に皺を寄せたが、明晰な頭脳ですぐに妙案を閃く。
「護衛隊にスナイパーがいたわね」
「はい、おります。それがいかがなさいましたか」
「すぐに彼を呼んで。頼みごとがあるの」
定刻になり、ニシャは慎重な動きで演壇に立った。三万の民衆が彼女に注目している。ニシャは緊張しながら演説を開始した。
一方、ニシャから800 m離れたビルの屋上ではスナイパーが銃口を構えていた。赤いドットサイトが照らす先は首相の額。その気になれば彼はニシャの脳漿を吹っ飛ばすことができる。
20分後、演説を終えたニシャはスナイパーに礼を言った。
「ありがとう。今度はビンディーを塗り忘れないように気を付けるわ」
既婚のインド人女性には、おでこに赤い印を付ける習慣がある。
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