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最推作品『かげきしょうじょ!!』が最高の映像になった世界に生きている

突然ですが、貴方の最も推している作品はなんですか?
多分ですが、これを読んだ方は様々な作品を思い浮かべたことだと思います。推している作品があることは素晴らしいですね。
ではもし。
その最も推している作品がアニメ化され、それが自分の希望を遥かに超えるものであった時、貴方はどうなると思いますか?
私は今、その「もし」の中に生きています。

私が今推している作品の一つが『かげきしょうじょ!!』です。
大正時代に創立され、女性だけで構成される劇団「紅華歌劇団」。その劇団員を育てる紅華歌劇音楽学校の第100期生として入学した渡辺さらさと奈良田愛を中心とした少女達の「未来のスター」を目指す物語は、少女達の精一杯の輝きと何ともならない現実のコントラストが美しく、『シーズンゼロ』を一読した際に一瞬で夢中になってしまいました。
以来、新刊が出るたびに「もうダメだ。面白すぎる」と叫び、単行本収録の外伝に「この巻でこの内容の外伝をやるのは上手すぎる」と唸り、「早く次の巻出ないかな」と言いながら過去の巻を読み返していたのですが、その『かげきしょうじょ!!』がアニメ化されました。というか今放送しているのですが、もうファンとしては「そこまでする?」というぐらい期待を遥かに超える作品になっていて、毎週見るたびに叫んでます。
「面白すぎる」「上手すぎる」って!

原作の再構成の仕方が凄まじい

現在まで放送された二話を見ていて強く感じるのは「原作の再構成の仕方が凄まじく上手い」ということでした。
原作だと複数人に跨っていた台詞が一人の台詞として調整されていたり、いくつかに分けられていた台詞が一つの流れになるように変更されていたりと、原作にある台詞一つ一つをしっかりと咀嚼して、その意味やその時のキャラクターの気持ちが見ている人間にしっかりと伝わるように作り変えている。
中には味があってくすりと来る台詞がなくなってたりしますが(例えば穴井一尉の声を指した「アナゴボイス」とかなくなってますね)、原作の面白さを台詞単位で検討し、適切になるように調整していることがよく分かるので許容できる範囲でしょう。
むしろ「台詞一つ一つをしっかりと読み込んでいる」という点にファンとしては嬉しくなってしまうのですが、思わず唸ってしまったのは穴井一尉に自衛隊に誘われたさらさの台詞です。
原作では「駄目です!自衛隊ではオスカル様になれません!」と自衛隊に入らない理由を述べているのですが、アニメだと「入りません!さらさは紅華でオスカル様になるのです!」と紅華歌劇団で目指す夢の話をしているのです。
この変更は一話での引きを作るためだと思うのですが、渡辺さらさの芯のブレなさと覚悟を感じさせる良い変更だと思いますね。
二話でも原作だともう少し後でやっている話を前倒しで描くことで作品に必要な知識の説明を巧みに処理していたり、「最初は目指してたけど、もっと凄い子に出会ってしまい、娘役にはなれないなぁと受け入れてしまった」というキャラクターのエピソードを一つにまとめて渡辺さらさとのやりとりの中に込めて対比させてきたりと、大胆さと細やかさが両立した非常に良いシナリオになっていると思います。

また『シーズンゼロ』に該当する話はどちらかといえば渡辺さらさと奈良田愛の二人に物語を絞り切っていて、二人以外の第100期生の印象はそれほど強くないのですが、今回のアニメは「第100期生の話」にするためか、オリジナルでいくつかやりとりが追加されているのも良いですね。
一話での杉本紗和と星野薫の互いに決意を語り合うシーンとか原作にはないですが、二人共男役志望であることから当初からライバル視している描写はあってもいい部分ですし、舞台裏見学などでウサギの衣装に反応する沢田千夏・千秋は後々の展開を考えるとここで反応させておくことで二人の原点が立ってくるので良いと思います。

こうした原作の拾い方が本当に上手すぎて、原作を片手に読むと発見が多いのは凄いことだと思いますね。

演技するキャスト

原作にない要素ーー例えば「声」、つまりキャストの演技も「『かげきしょうじょ!!』を見ている」という気持ちにさせてくれますね。

本作では全体的に声を作らずに誇張をあまりせず、そこはかとなく自然さを感じさせる演技になっていますが、これは「声優が演じているキャラクターも演技をする」という作品であることを念頭に置いたものでしょう。
キャラクターが演技した時の事を考えるのであれば、この作戦は正しいと思います。
しかしそうであるのならば「誰に演じてもらうのか」は大事で、アニメ化が発表された当初から「誰が演じるのか」はファンの注目を集めていました。
特にさらさ達の一つ上、第99期生の野島聖はその中でも最も注目されていたキャラクターでした。
「天性の娘役」と呼ぶに相応しい見た目の可愛さと磨き抜かれた演技力の高さ、そして甘い言葉の中にさらっと毒を込められるようなキッツイ性格と、中山リサ外伝で描かれたある展開から今もなおファンの心の中に残り続けている野島聖は、キャスティングの面でも演技の面でも難しかったと思うのですが、二話で聞いた野島聖は間違いなくあの野島聖でした。
台詞の中に忍ばせる毒の比率が台詞によって違う。それでいて可愛い。
花澤香菜は間の使い方や言葉のアクセントであの野島聖を表現しきっている。シビレましたね。
同時に中山リサ外伝を思い出して、「野島聖……」と呟く人間になりましたが、この野島聖は凄いです。

当然ですが、メインである100期生も素晴らしいのでこの後の展開が楽しみです。
特に「歴代屈指のエトワールになる」と言われた山田彩子の歌と、宝塚出身の七海ひろきが演じる里美星を楽しみにしてます。

音楽が強すぎる

なお『かげきしょうじょ!!』は音楽への力の入れ方も良いですね。
アニメ関係では『蒼穹のファフナー』の劇伴を担当したり、『プリティーリズム・レインボーライブ』ではプリズムワールドの使者であるりんねと天羽ジュネの作曲を担当したり、『プリパラ』では劇伴を担当した斉藤恒芳が本作の劇伴を担当しているのですが、斉藤恒芳って宝塚歌劇団にも楽曲提供をしている人なんですよね。
そんな作曲家が劇伴を担当してくれているだけでも「あっ、本気だ」というのは伝わってきますが、EDがこれなのにはもう本気野中の本気を感じます。

もう何も言うことはないです。
『かげきしょうじょ!!』のためにこの曲が制作されただけで満足です。

結びに

ファンをやっていて嬉しい瞬間っていくつかあると思いますが、「素晴らしいメディアミックス作品にしてくれた」と思える瞬間って、その中でも最上級に位置するものだと思います。
それを味わっている今は本当に幸せです。
米田和弘監督並びにスタッフの皆様、見るたびにそういう幸せを噛み締めてしまうような素晴らしい作品にしてくださって、本当にありがとうございます。
来週放送の三話以降も楽しみにしながら、先日発売された11巻を読み返していきたいと思います。


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九条水音
プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。