中学生の時なんか書いた話をここで晒して除霊する みずのーとvol.25


『死神ゼオ』


俺は、宿野陣(しくのじん)。死神に憑かれている。

こうなったのも数日前のことが原因だ。高校受験の勉強が終わり塾から家に帰る途中、夜空に何か光るものを見た。

それに興味を示したのが間違いだった。

「お前でいいか」

その声と共に黒い影が物凄い勢いで落ちてきた。ぶつかると思った瞬間その黒い影は消え、代わりに脳内に声が聞こえるようになった。

「俺はゼオ。死神だ。直接頭の中に話しかけている。ちょっと人間の助けをしたくてこの世界に降りてきた。幸運に思え。お前に取り憑いて助けてやる。」

突然の状況に理解が進まない。死神??助ける???冗談じゃない何だこれは……と思っていた矢先

「…待て。少し右に寄れ。」

ゼオの声が脳内に響く。言う通りに動いた次の瞬間、猛スピードでバイクが突っ込んできた。

「……あっぶな。なんだこれ…」

幸い自分には怪我が無かったが、それはゼオの言う通り右に避けたからであった。突然の出来事に心臓の鼓動と冷や汗が治らない。

「そういうことだ。まあ仲良くしてくれよな。」


その日から、たまに脳内にゼオの声が聞こえるようになった。

初めは一刻も早くいつもの生活に戻りたいと思っていたが、案外取り憑かれているのも悪くないかもしれない。

ゼオは授業中に当てられた時の解答や、小テストの範囲や答えも教えてくれた。今日は傘を持っていけと聞こえた日は、誰も傘を持ってきてなかったが陣だけ濡れずに済んだ。


そして、ゼオと出会ってから4日目の放課後

「陣!今日いつものメンバーでテスト勉強しにマツク行くけどお前も来ないか?」

クラスメイトの翔が元気良く話しかけてくる。

「お!!いいじゃん行くよ!ちょっと待ってな!」

返事を終えて帰りの準備を行っていたら、頭の中にゼオが話しかけてきた。

「俺が居ればテスト勉強なんて余裕だろ。行くのか?」

(そうそう。まあ言ってしまえば勉強なんてついでなんだけどね。一緒に友達と話すのも楽しいんだよ)

そこで陣はとあることを思いついた。

(なあ、ゼオ。今回一緒に勉強すること人の中に西川香里奈って人がいるんだけど、その人と仲良くしたいならどうすればいい?)

「あぁ……」

面倒臭そうな声が脳内に響く。

「やめておけ。あいつは高校生の彼氏がいる。無理矢理奪うこともできなくはないが、仮に結ばれたとしてもお前とはうまくいかん。」

(は、はぁ……!?)

信じたくないことを言い出されたが、これまでのゼオの発言は全て当たっている。今回もそうなんだろう。

肩を落とし、急に重くなった足を動かしながら翔の元へ向かった。


マツクに着いたはいいが、全く勉強する気にはなれなかった。

「どうしたの宿野くん?さっきからペン止まってない…?」

「あ…西川さん。大丈夫だよ気にしないで」

心配する香里奈の裏に、どうしても彼氏の姿が過ぎる。去年同じクラスになってからずっと片想いしていたが、こんな形で真実を知ることになるとは思わなかった。

(たあ散々な目に会ってフラれるよりはマシなのか…??ポジティブに考え直すことにするか…そう考えればそれはそれで人助けなのか??…ん?)

ここで、ふとした疑問が頭の中に浮かんだ。

今まで突然の出来事すぎて考えもしなかったが、ゼオは何のために「人助け」を行っているのだろうか?考えれば考えるほど裏があるように思えてくる。

しかし実際問題、この数日間ゼオに取り憑かれて悪いことは無い。香里奈の件も真実だとしたらまだこの程度の凹みで済んでいる。

もう少ししてから考えればいいや……と思考放棄した。


「じゃあお疲れ様ー!!テスト頑張れよ!!」

「ああ、翔もお疲れ。」

帰り道。今日はゼオに言われるまでもなく夜は天気が雨なので傘をさして歩いて帰路に着く。

結構強い雨だな…風も強いと思いながら河川敷を歩いていると、何か小さな影が見えた。

「あ、あれは…!!??」

見ると川に小さい女の子が一人で溺れいるようだ。

「た、大変だ!!!すぐに助けに行かないと…!」

川の方向に走り出すが、すぐ脳裏に聞き馴染みのある声が聞こえた。

「無視してそのまま真っ直ぐ帰れ。」

一瞬内容が理解できなかった。

「は!!どういうことだよ!?すぐ助けなきゃいけないだろ!!」

「お前が助けに行ったところであの子は助からない。」

認めなくはないが、ゼオの言葉だ。

「じゃあ…他の誰か助けられる人は?」

「いないな。そもそもあの子は手遅れだ。俺は死神だから死が見える。」

「でも……」

訴えかけようとするが、ここまでゼオの言葉が間違っていたことは無かった。

「ん、ああ心配するな。お前があの子を見捨てたからってその姿を誰も見ていない。そのことで非難されることはないから安心しろ。」

「そういうことじゃない!!」

どうすればいいかわからない焦りこそあったが、やはり行動せずにはいられなかった。

「やっぱ、やってみなきゃわからないだろ!!!」

そう言って足を動かそうとしたが、体が急に金縛りにかかったように動かなくなった。

「やめておけ。」

必死にもがくが動けない

「助けようとして助かるなら、お前の自己満になるかもしれないが。何度でも言うがそもそもあの子は助からない。お前が助けに行く理由なんてない。何も無かったと思い真っ直ぐ帰れ。その方がお前にとっても幸せだ。」

金縛りのせいか、声も出せない。

そして、雨に打たれながら流されてしまう少女をただ見ることしか出来なかった。

「そういうことだ。俺がいて良かったな。そのまま家に帰れ。」

金縛りは解けて、体は動くようになったがどうにも心が穏やかじゃない。

「いいか?お前は幸福な人間なんだよ。俺が最適解をいつも与えられる。もう間違うことも無い。幸せな人生を歩むことができる。感謝しろとは言わないが誇りに思え。」

ゼオの言葉も頭に入らないまま、ただただ歩いて家まで向かうしかなかった。


俺は、この「死神」と付き合い続けねばならない。






第二話に続く(かもしれない)

そもそもこれ以上当時の記録が無い







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