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【詩のようなもの6編】 定説
【定説】
年代毎の自己啓発本を買って並べる
10代から70代までそれぞれの人生
本質的なテーマは何ら変わらない
健康、金、人間関係、仕事
それぞれの見てる景色は
角度が違うだけで大方定説通り
稀に起きる圏外の思考に釣られ
失敗と成功をした人たちの話が
少しだけ刺激的
自分の人生
誰かに引っ張られては
自分の心で抗って歯向かって
得た新鮮な景色も
他の人から見れば
それもまた大方定説通り
常識はいつだってグラデーション
逸脱はいつだって定説の範囲内
進むべき道は結局自分次第
読み終えた啓発本たちは古本屋へ
【裏ワザ小ワザ】
裏ワザ小ワザ
線越えて千超えて
今の自分がいる
ほろ苦い日が続くから
コーヒーの焙煎を変えるような
甘さを出すため隠し味になるような
いつもと違う小ワザを学ぶ
濃淡のない日常
カーテンの色を明色にするように
毛布の色をパステルカラーにするように
意識を変える裏ワザを学ぶ
裏ワザ小ワザ
差し色地色
新色に馴染む今日の自分がいる
【クジラ雲、ひつじ雲】
夕焼けのクジラ雲が通り過ぎる
もうすぐこの日常も夜になる
得難い時間が遠い過去になる
掠れる瞳
掠れるペン先
掠れる思い出
電柱に絡まる蔦を解くように
汚れを取る米研ぎのように
ワイシャツの皺とるように
自分の知らない自分に何度もアクセス
永遠の別れに備えるために
終わらない夜を避けるために
増えていくひつじ雲のように
自分の好きなところ数えて眠る
【灯台下暗し】
最初からここにいた
ある意味灯台下暗し
僕はスタートを切るつもりが
ゴールにいた
中島みゆきの''時代''を聴いた
ほんとに回り回ってた
心の形も人の夢も
なんだか自由すぎて笑える
ここにいたことを気づいて
理想は理想のままにするのも
難しい話だと独りごちる
全ては出発点
回り回って着地点
ここもまた捉え方次第で
また家のような場所
【静謐と現実】
少しだけ笑えた
今日のその事実が
明確に明日に向かう現実
布団の中の宇宙も
ドアの向こうの漆黒も
ゴミ箱の中の過去も
純白な紙に刻む未来も
“生きててくれてありがとう”
何気ない一言が全てを包む
そして僕は知ってる
その一言が聞こえない人を
届かない人を
どうしたらいいかなんて
迷うことすらおこがましい
解ってる
恵まれた者の感覚だと
風船のように膨らむ
心の形 人の夢
手段を増やすこと
人目に触れていくこと
遠くまで歩こうとすること
細やかな想像力から始まる
夢のような現実を続けてくことで
夢の中で静謐な時間を君と過ごす
【dare】
桜を待つ季節
節を折る道すがら
私はリスクを取って
君に花を届けにいく
逆光に目が眩んでも
自転車を漕ぎ出すように
足を踏み出す
向かい風に煽られても
握手をするように
手を差し出す
パンケーキを膨らませるように
弱火で続く情熱が色をつけて
今日の自分はいつも以上に
ワクワクしている
桜を待つ季節
節を折る道すがら
私はあえてリスクを取って
君に花を届けにいく
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青