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【詩のようなもの6編】 まちまちまち


【まちまちまち】

先がない 
逃げるしかない
そう思うときほど
真夜中のラジオ聴きながら
ちょっと待つ

負の連鎖を止めるために
好きなものを食べる 飲む
本音を見失わないように
すきなことを話す 書く
擦れた時が隠れるのを待つ

弱さも失敗も許せるように
エネルギーの回復を促しながら
気晴らしをしつつ風を待つ

街に溶けていく実態のない正論も
ブレブレの自分の思慮の無さも
水のような心を受け入れながら
新しい自分を待つ

【夜の波線】

大きな振り子が揺れる世界
とはいえ私はあまり変わらない
その状態で過ごす日々に
苛立ちともどかしさと情けなさが
波のように寄せては引いていく

連鎖する飾り言葉で
流行り廃る切り取り線上を駆ける
渦を巻くように記憶は刻まれていく
寿命を引き延ばせるよう蒸らしては注ぐ

【夜の風、月の光】

月の光、揺れる瞳
つよく、いとしく
言葉にならない光を映し
風に託す思いの丈

戸惑う夜、撫でる風
やさしく、さみしく
言葉にできない溜め息を
そっと撫でるように
手紙をくれるように
繋がる心のすみっこ

【re:】

今この瞬間
眠気に襲われている

選択肢は二つ
無に還るように眠るか
有限な物語の種を拾うか

リライトするように
ペンを持つところから

リセットするように
外の空気を吸うところから

今この瞬間
心は自分の光を残すように
闇の冷気を裂くようにリスタート

【詩碑】

積み上がる本の山から
ショベルカーで土を運ぶように
新しい文化を生み出す

見慣れた街と道から
猫を撫でる子供のような
大切な一瞬を見い出す

僕は僕を変えていく
空っぽであれるように

私は私を超えていく
鉛筆を削るように

確かに通った流れ星を
詩碑に残せるように
このノートに書き散らしていく

【補註と回り道】

季節の変わり目
鏡越しに見る已己巳己
歩調が合うように一晩おいてみる
声が重なるように先人の足跡を辿る
意図しない回り道へと向かわせている

時の結び目
振り返る已己巳己
未来を知りたいが故に諦める
未来を諦めたが故に今日を補う
少しずつ進んでいける回り道
案外、近道へと向かわせている

縁の繋ぎ目
愛故に受け入れる
受け入れたからこそ
回り道の連続も意外と奥が深く
更なる回り道へと向かわせている


最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青

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