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【詩のようなもの6編】上京
【上京】
左手に握ってるのは
御守り代わりのソレ
右手に握ってるのは
昨日貰い分けた心
人波を半分従うように
でも逆らうように泳ぎ
ビル群に囲まれた分離帯の中
止まっては進み止まっては進む
頭上に広がるのは
忘れていた青空
足元に落ちてるのは
積まれてきた先人の足跡
時に傘が必要になり
時に長靴が必要になり
前人未到の夢を歩道橋の上
見上げては見下ろし
夜の街に溶け込んでいく
【暗中模索】
闇夜に蠢く狩られる側
駆けて止まって駆けて
確実な逃避行を暗中模索
瞬き一つが生死の境目
油断大敵 相手に不足なし
恐怖が高揚 冷や汗から武者震い
先を読む暗中模索
敬意を保ちながら命を握り
道徳が揺らぐ衝撃に打ち抜かれ
本能と理性がせめぎ合う
その間を暗中模索
自分がどこにいるか見失えば
今日までの暗中模索は意味を失くし
急速に変わる立場についていけず
解決策も立てられず目が眩む
【体現】
体現出来ない理想
壁に刺された画鋲の跡
消しカスだらけの机上
方向のズレた軌道
無垢材に価値を付けられず
深みある経年を求めて
結果は体現出来ない大言壮語
それで終わる
夏場の蒸し暑さを前に
寝付けない寝苦しさは
迷言が生まれるきっかけだろうか
深夜3:33に寝汗が脳を醒ます
放送コードギリギリのラジオ
枕元の読みかけの積読本
充電中のスマホ
残響のノイズが視線を可視化
明日のことはお構いなし
体現出来ない向こう側を
朝までインプット
【反復詩】
周りにははぐらかしている
目指すものがあることを
しれっと巻き込んでいる
君が持っていた可能性の一つを
知っておこう
見えない形で奪うことを
反復しよう
可能性は一つじゃないことを
怖くて地に足つけている
不確かな記憶の片隅を
いつか名にし負う姿がある
そのイメージを持つことを
繰り返そう
何が起こるかわからない今を
反復しよう
覚悟を誓うイメージを
【開花】
日々進化 退化 開花
言い切れないくせに
突きつけられてしまう弁論
その後で猛省 訂正 申請
むくれた顔は下を向き
舌を噛みながら辞退
それが続けばいずれは枯れる
開花することなく
焦ったところで骨は軋み
泣いたところで将来は窄み
嘘も方便 盲点を突く
狂おしい自転
窮屈なアングラのにわか雨
辞められない転職 天職
緩やかな衰退に混じり合う
大きな間違いを眺めて
遠くの水際で進化 退化 開花
【今日も生きている】
今日も生きている
だから死ぬ準備を始めよう
届かない祈りと荒んだ心に
飽きが来る前に
責任を伴わない陰謀論
行き着く先に集約する崇拝
覚束ない解釈 靡いた香
霧が晴れる前に
無駄だと分かった途端
変化は止まり崩れていく
可視化されたそれは
確かに目の前に訪れた
雰囲気に飲まれて
悲しみに囚われて
茫然自失のまま
まだ残ってるものすら見失なう
でも今日も生きている
だから死ぬ準備をしよう
気づかなかった存在に気づく為
生きることを肯定する為に
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読んでくれてありがとうございました。
暑さに気をつけてください。
水宮 青