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【詩のようなもの6編】靴下と玄関と雨

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【靴下と玄関と雨】

洗濯が滞ってるここ2、3日
雨のジトジトが及び玄関前に
脱ぎ散らかしたままの靴下

そのまま乾くこともなく
洗濯機 ボタン一つ押すのも億劫のまま
生乾きの靴下が増えていく 

気づけば足が赤く腫れて
痒みと痛みが僕を寝かせず
肥大していく 荒れていく

玄関の雨音は更に大きく
敏感な肌に苛立ち 角が立ち
一張羅来て外に出るのも億劫のまま
だんだん全てが嫌になっていく

溜まりに溜まったモヤモヤ
人に当たるわけにもいかず
溜まりに溜まってた靴下を投げる
少し解消 でも疲れが溜まる

しっちゃかめっちゃかの玄関
明日の予定を壊す雨
汚れだらけの靴下
早く陽に照らされていたい

【ミルクと花】

誰もいないリビング
新聞とタブレットを置き
花瓶の花を背にミルクを用意

誰も居ないけど静観されている筈の部屋
今日もとりあえず元気なフリ

花びら一枚落ちて
それを皮切りにミルクと大した価値ない記事を
頭の片隅に放り込む

今日はまだ晴れてるだけマシ
出かけるまでの足取りは
財布の中身と花の枯れ具合に左右されている

増えた皺に手をやり時が止まったまま
花になった君を少しだけ
羨ましくも思える様になった

後何回ミルクを用意すれば
もう一度君と朝を迎えられるだろう

欠けてきた視野の狭さに
少し君に会える予感がして
高揚と不安は日に日に
残りの花びらに重ねて今日を浴びる

【並ぶ写真】

エアコンの効いた部屋
冷たい水 コーヒー お茶
冷んやりしたシーツ
充分に初夏を過ごせてる

でも片隅に並ぶ写真を見ると
目頭が熱くなる

花の匂い 線香の匂い
好きだったお茶菓子が並ぶ
何も返せず減らず口だけ並んでた

身体中に後悔が澄み渡る
時間を感じさせて並ぶ写真
現在を問いかけるように

早朝の木漏れ日
花が咲き 鳥が鳴き 風が吹き
残月の下で並ぶ写真が睦まじく
微笑み続けている

【懐かしのゲーム機】

集まる場所は決まってる
此処にあるのは懐かしのゲーム機
昔のやり方 慣れた手つきで
親しんだお菓子を食べながら

聞き飽きてる起動音
現実の軌道は逸れたまま
ノスタルジーに浸る

古いのに新しい
そう言えるだけの時間を積んだ
なのに得たのは要らない自分
知ったのは後悔先に立たず

胡座掻いてレーシング
寝そべりながらアクション
呆けながらミステリー
現実と画面の向こうは
どうしようもない距離感

それでも懐かしのゲーム機は
意外と心の拠り所になってて
今日を生き延びるきっかけの一つ
そんな風に思う自分に呆れながら
コントローラーを握っている

【ジャムパンとコーヒー】

合間合間に挟む憂鬱
足りない何かに手持ち無沙汰
足りてるのはいつものジャムパン
無糖のコーヒー

何があってもまずはそれ
血糖値なんて知ったことか
ジャムパンを頬張る
で、やっぱり怖くなって
無糖のコーヒー

周りの友人は少し引いて
その姿が俺だと認識
そんなわけないのに
そう見せることで
俺を知っているつもりにさせる

ジャムパンと無糖のコーヒー
好きなのは事実さ
でも毎日食べるほどじゃない
それでも誰かの前では食べている

いつになったらできるだろう
気を許した食事
いつになったら言えるだろう
ホントの自分

今日もまた
ジャムパンとコーヒーを買い
周りとは違う食事をする

【邂逅〜end】

色々 諸々 白黒付けづらくて
生きることを諦めようとしたら
心臓はそれを嫌がるように
ギュッと鼓動が速くなる

明日のことを考えなければ
出前を取るのも躊躇わず
執着してた物も手放せる
良いことにも気付ける

終わり方を探し始めて
少しずつ慣れてくる寂寞

暑さも寒さもしみじみと
肌にまとわりつくから

二度と無いと思ってた邂逅
いざ、目の前に現れたら
それはもう言葉に出来なくて
心臓の音が足を歩かせる

そんな日があってもいい
終わり方に引っ張られて
笑い始めた今日の自分に邂逅

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最後まで読んでくれてありがとう。

#眠れない夜に

水宮 青



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