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【詩のようなもの6編】最後の夜

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【最後の夜】

馬鹿馬鹿しい会話
人が見ればきっとそう思う
僕もそう思いながら
そんなのを続ける

長い夜は君に似合う
たまにそう思うのは何故だろう

変な空気に包まれて
明日までを共に過ごす

ズレたタイミングで
互いに互いを気遣いながら
本音をうまく散りばめる

秘密の話が増えている君
それに気づいてしまう僕

互いに焦らされた欲望を
朝が来る前にぶつけて
長い夜の頂天に向かう

きっと朝が来たら
隠されていた全てを
君は話すつもりなんだろう

疲れ切った僕はその後
夜がゆっくり明けていくのを
何も出来ないまま
君の後ろ姿を見つめてた

【引きずり】

砕けた口調で淡々と
出会った頃とこれからの話
私は受け入れられず
理解に時間がかかった

「一緒に居るのがキツイ」
その一言があまりにシンプルで
一番大きな傷を作る
言った方も言われた方も

私はいつの間にか
君のことを下に見てたらしい
君に言われて気づく

朝の清々しい時間も
夜のいやらしい時間も
もうあまりに直視して
思い出せない思い出したくない
言うなればトラウマ

それからの10年
人との関わり方も価値観も
どことなくどうでもよくて
一人で居るのが至高
いや同じ繰り返しが怖いの

時の流れが傷を瘡蓋にして
明日があるという事実が
少し君を浮かべさせるも

あの砕けた口調のように
淡々と日々を重ねる
滑らかに艶やかになることなく

【尾を引く余韻】

仏頂面がよく似合う
自他共にそう思う

でもそのせいで
褒めることも
褒められることもないまま
社会の一員とやらになった

ただ一言 素敵と人に言えたら
もっと何もかも良くなるだろう

でもいざそんな場面に出会すも
しどろもどろ あたふた
後悔の尾を引く余韻

ただ元気よく笑って
健やかに朗らかに生きたい
そんな願いが遠く感じる

望外の喜びを探して
今 目の前 見えてないだけ
そう決め込んでもがいたら
後悔は後にも先にも現れないのかな

いつまでも尾を引く余韻
ふと大声で掻き消したくなる
でもお隣さんに迷惑だから
布団を丸めて暗闇の中 独り言

【ストップモーション】

長い人生と感じながらも
思い出す一瞬一瞬

割と大事な思い出も
綺麗な藻屑になってた

途切れ途切れの場面に
現在の解釈を落とし込み
ストップモーションのように
確かなものとして刻む

無力な日々も
誰かに優しく出来た日も
涙を滲ませながら
少し曖昧な記憶を辿り
合理的な選択をする

いつも通りと言えない
新鮮だけど憂鬱な時間帯

周回遅れの僕の考えは
最先端を自負する貴方から
笑われたのをまだ覚えてる

閉じた筈の苦い記憶が
再び予期せぬタイミングで
途切れ途切れの場面に
現在の解釈を落とし込み
ストップモーションのように
確かなものとして刻む

いつも通りに見えるような
TPOを弁えた服装で
長い長い1日を捨てるように

【切望した時間】

抗うつ剤代わりになる
薄いエッセイやコラム

切望した時間とは程遠い
憧憬した時間とは程遠い

小間時間を充たす文字数
少しだけ自分が知れる

今になって学生の頃に
もう少し世界の広さを
実感できていたらなんて
切望する自分がいる

図書館で借りた本を
静かな喫茶店で読みふける
そんな時間を続けていたら

切望するものは時間じゃなく
まだ知らないものだったのか

知らないものを知らないまま
切望するのは帰ってこない時間

なんだかちっぽけな人生
今更抗える精力もないから
答えを知ってるものだけに
囲まれて暇を過ごす

【惜別の連続】

あなたは口を割りたい
僕は体を引き締めてる
起きた齟齬は誰のもの?
誰も引き取らない  

最大限の練習は
最小限の涙で済まなければ
明日の役に立たないの?

理不尽でも
納得いかなくても
値下げの商品見かける度
語らない美学が遠く感じる

偉人の言葉も
奇人の言葉も
もう膨大過ぎて
誰が誰を信じればいいのやら
必要なビタミンだけ取っとこう

積まれた読みかけの本
食べ残したホールケーキ
伸ばし続けてきた長い髪
どこから別れを告げようか

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最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青