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【詩のようなもの6編】 思い出す為に

【思い出す為に】

カーテンを開けて
ピアノを鳴らして始まる1日

違う 違う これだ
音を探して気づけば午後

ふと一人きりの広い空間
小さなノスタルジーが粒々
またピアノへ向かう

違う 違う そうだ
染み付いてる季節の匂い
過去の影法師 涙隠すスコール
鳴らしては書いて 

子供の頃憧れた人たちは
憧れと絶望は表裏一体だと語って
今や年老いて隠居生活

それを越えたくて仕方ない
一人の時間 

夕方のチャイムが鳴っても
夜の蝶が笑っていても
そのまま探し求めて

季節を刻む 侘しい音色
カーテンを揺らすように
心に波を寄せて1日が終わる

【私の名前は】

目紛しい変化の中に
そっと けれど大胆に
私の名前は泳いでいた

あなたと巡り逢えたこと
この先に遭う一抹の切なさと比べれば
今 充分に幸せで恵まれてて
覚えていたい まだ覚えていて
私の名前は…

劣等感を栄養にするのも
少しずつ難しくなってきて
居場所が違くても
声を重ねるあなたがいる
それだけで全ては輝く始まり

私の名前は
私の名前は

苦しい時 忘れたい時
あなたの声で呼んでみて

ここが私の居場所だから

【Crash】

寝覚め悪い日が続く

さざなみの音
焚き火の音
森の音
ただ恋しいよ 疲れてるね

「厄日は何をしても厄日」
友人の一言 フラッシュバック
特に何もせずもう一度寝よう

真夜中にまた目が覚めて
泣かないことを願掛けにしてたのに
枕カバーの濡れた跡
もう今更どうでも良いか

暑過ぎる夏のせいにして
昔の恋人に腹立てて
清々しいでしょ

ただ叫んでみるよ

鈍い頭痛を掻き消すように
全てをぶち壊すように

【爪切り】

2、3日おきの爪切りの音
少し前から変わったでしょ
気づいてた?

気付いてないなら
もうそれっきりだろうし
気付いてて言わないなら
もうカウントダウンは近いね

今更思い出すこともないけど
せめて最後は笑顔で終わりたい
その小さな願いが溜め息に溶けて

あなたが隠すようにしまってた
私が出そうとしたものを
目の前にそっと置く

清算された関係になって
初めて見えてくる
あなたの悩み 出してたSOS
気づけなかった自分の気持ち

全ては終わってから刻まれる
互いの思い

2、3日経って流れ出す
過去を求める涙

パチンと響く爪切りの音が
妙に痛々しさを感じる

【ゆりかもめ】

少し先の未来
手を伸ばした先とは違う角度で
天使と悪魔は微笑んでる

答えを出すこと
どんな場所にいても
躊躇いたくない

迷うなら乗るよ ゆりかもめ
体揺られて 心揺らして
決める答え 後悔しないように

迷うなら乗るよ ゆりかもめ
風を感じて 街を見つめて
決める答え 私のものであるように

【Maybe I】

経年 これが今の私

月の明かり 影の轍

夢の名残 そっと涙と共に

渇いた静脈 愛に肖り

木々の揺れに倣い

まだ知らない景色へ





最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青