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【詩のようなもの6編】悲しい夜の話

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【悲しい夜の話】

賞味期限切れのサラダ
雨風がシャッターを叩く音
キッチンから漂うゴミの匂い
捨てることのできない思い出

今日は何処から話そうか
悲しい夜の話

枕元の濡れた跡
積まれた段ボールに溜まる埃
録画したままの番組
見慣れない店のロゴがあるレシート

昨日は何処まで話したか
悲しい夜の話

嘘と嘘が擦り合い
いつからか共通点として持ち合い
僕らの始まりだった柿落としも
今はもう苔だらけ

梅雨が来ない複雑な夏
陽の光は暖かくても
夜は必ず悲しい話で終わる
そんな都落ちをいつまで
取り繕っていられるだろうか

【螺旋階段】

闇に祈ると現れる螺旋階段
素材は金属とコンクリート
経年劣化の錆と汚れ付き
心境の深い場所へ続く

時の流れを逆流しながら
胎盤の頃へ彷徨えば
不平等と不公平を絡め合い
踏み外した螺旋階段を
心地良く浸ってしまう

心臓の音が摩耗しても
フラッシュバックする過去
閃いた逆転の発想もご破算
誰の声も聞こえない所へ
足を更に深く突っ込んで
パラダイムチェンジ

グルグル一周回っても
大して変わらないモノ
グルグル一周回ったら
大きく変わったモノ
足が地に着くまで
バランス良く祈り続けながら
この螺旋階段は終わらない

【純情可憐】

想像の及ばない歓楽街
欲望渦巻く笑い声
引き寄せの法則で客寄せ
疑う余地なし 明日への活力

有益かどうかで判断
出鱈目な性格が功を奏す
真面目な討論が手をこまねく
全てはヒトの為カネの為

とことん行こう真っ暗な空の下
街灯の及ばない屋根のスキマ
引き消す事に精を出し
声の無い閑静な夢につむじ風

純情可憐なつもりだったのは
いつまでだったんだっけ?
もう思い出せない光景を一瞥

気づけばずっとずっと片隅に
そうありたいって願うばかり

時が経つたび一期一会の世界
底抜けの贅沢な欲と
最低限の暮らしをする現在の
折り合いがつかないまま
純情可憐な君は可愛く見える

【すねかじり】

脛を齧ったところで
得るものはマイナス思考よ

羽を千切ったところで
墜つものは冥利を得られずよ

蜂の巣をつついたような
ドタバタ劇を繰り広げて
したくもなかったことをして
いたくもない場所に流れ着く

穴の空いた靴下も
淀んだ布団のシーツも
愛着が湧けば大丈夫らしい
「住めば都」って言葉が口癖なら
何処に居ても平気だとさ

一人の清々しさと
独りの物悲しさが相対と鬩ぎ合い
今日はテレビの音に慰められ
一人の清々しさが勝つ

傷口に塩を塗るどころか
泥を塗る自分史の日々
終活って言葉を意識する
すねかじりの想像力よ

【飛んでかないの】

喜びと苦悩が散らばり
束になっても羽にならず
其れを知らない墜死者は
無下に言う「飛んでかないの?」

そう言われても
あっちこっち散らかり
点になっても天に行けず
心底がブレない人格者は
無下に言う「飛んでかないの?」

僕はいつまでも厚顔無恥
自覚あってもなくても
飛ばされて落とされて
また羽になるように
ちょっとずつかき集める
それの繰り返し

【オチがない】

僕の会話にオチがない
オチを意識すると辿々しく
言いたかったことが遠くへ行く

理想的な構成力がないから
原文のまま味のないお話
ジェスチャーが肥大化
でも拙い部分だけ強調される

辛口も甘口も使い分けて
トドメのオチが決まるなんて
夢のまた夢の話だから
オチがない無難な流言飛語に
逃げそうになってしまう

オチがない価値がない
視野も世界も言葉も狭くなり
囚われるようにヒトの目が
怖くなり喋ることが分からなくなる

投げだした違和感も
伝え方一つ間違えれば
オチだけが意味を変え言葉を変え
伝わらない伝言ゲームが始まる

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最後まで読んでくれてありがとう。

水宮 青


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