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【詩のようなもの6編】めくるめく

【めくるめく】

紫陽花の匂いが遠くからする

めくるめく今年が半分過ぎた

この時期の偏頭痛もいつも通り

大切な人の数は少し減った

見知らぬ人との距離は空いた

通勤通学の道は梅雨か炎天下

辛酸を舐めて飛び込む場所は

水溜まりか窓の外か君か

水泡に帰すイメージがめくるめく

【俗説】

「価値が判らない仕事さ...」
君はそう言いつつ働いて
疲れが取れず溜め息

君の含みある笑いは
どっちの意味に傾いたのか
こんな僕じゃ理解出来なくて
また捨て身の質問
それで分かる後の祭り

「こんな俗説があるんだけど...」
僕はこう言った瞬間
間違いに気付き言葉と息を呑む

根拠ない俗説より
君を気遣える一言が先に出ず
軽佻浮薄な振る舞いに
思わず自分の頬をビンタ

後悔先に立たず
言おうとしていた俗説が
良くも悪くも自分に当てはまり
涙目になりつつも
僕も君と同じように
含みある笑いを自分に向ける

【言い交わす】

白い部屋の中に色付く僕の色は
薄く悲しいマルチビタミン

無添加のまま展開する君に憧れ
最新の家電の使い方は僕にはわからないのに
僕に必要な器具だけは使い慣れていることに
カーテンを閉めたくなる

「使う薬の数が僕の足跡」
そう言えてしまう僕を
君は病んでいると思いますか?
意地悪な質問だと笑ってほしい

また明日薬は増えて
繊細な維持に使う時間も増えて

君の笑い声が嫌になりながらも
気が紛らう自分もいるから
感謝の意を込めて薬を飲み
おやすみを言い交わす

【自立】

寝返りすること
無意識から意識して
風の声より貴方の声に
聞く耳を持つ様になった

でもそれに気付くための
長い時間が必要だったから
今は言いたいことは一方通行

込み上げてくるものがある
でもそれが最後

手向けの言葉は結局言えず
スターチスの匂いがゆっくりと
情け無い僕を自立させる

素気ない愛想ない冷たい
そんなちょっと前の自分が
今はどうしようもなくて
ゆっくりと涙とは違う形で
僕の自律神経に形成されていく

【夏にむけて端的に】

早朝の雨音と共に
頭痛で目が覚める
端的に言えば怖い夢を見た
日々の疲れを感じる

夏空の前座として現れる低気圧
めいいっぱいの水溜まり
端的に言えば一番苦手な季節

せめて好きな雨具を持ち
憂鬱な僕を連れ出すつもり

だけど朝の報道を眺めたら
頭の中で端的に言葉を要約され
外に出ない為の言い訳が勝る

今年は長い空蝉になる予感
風情を感じる為の修正が要るから
整わない体調が僕をベッドへ誘う

端的に言えばもっと寝たい
せめて蝉より長く生きたいから

【さぁ今日は】

花の匂いで目が覚める
でも線香の匂いな気もする
シャッターを開ける前の陰鬱
さぁ今日は何から始めよう

やるべきことは沢山
やれないことも沢山
視点を変えれば見つかるTo Do
さぁ今日は何から始めよう

手の届かない規則の壁
人は足りてもいらない相席
拙い礼節すらたまに武器になる
さぁ今日は何から始めよう

遺された生きた跡
日が過ぎれば産廃物と為す
誰も触らないなら枷になる
さぁ今日は生きた証を掘り起こす


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最後まで読んでくれてありがとう。

朗読や曲をつけてくれる人いたらいいなと思うことがあります。

よかったら他の詩のようなものもぜひ。

水宮 青