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【詩のようなもの6編】菜の花
【菜の花】
川沿いに咲き並ぶ菜の花
往来する排気ガスの流れの中に
ただ巡ってきた今日を彩る
僕はその間を風に合わせて
今日を営む光を観察するように
歩き流れる
何かを成すために貼られた広告
道に張り巡らせた電柱と街灯
そんな場所の下にも
隠れて咲く菜の花
迷子になって堕落してる僕より
懸命に咲いているように感じて
ただ可愛らしく意地らしい
僕は勝手に菜の花に
愛着を抱き始めて
歩き流れる中で
明るく枯れずにいれたら...
そんな願いを菜の花の匂いに抱く
【少しのやる気】
間抜けのまま
腑抜けのまま
何も無いまま
歳を重ねる怖さ
眩い若さと見えない老いの
境界線に片足踏み込んで
少しのやる気と多くの諦めで
推移している
遅れた暮らしのツケも払えず
自分だけの宝物手放して
明日のための雑炊を炊く
華奢の身体が足取りを重くして
外へ散歩行くだけで疲れて
愛着の湧かない自分に辟易
間抜けのまま
腑抜けのまま
何も無いまま
心を向ける難しさ
【瀬戸際】
跳び跳ねた光景は
続くわけもなく落ちていく
瀬戸際で平泳ぎ
底の見えない夜
明日との瀬戸際に
泣くか笑うか
その両方か
柔らかい感情に縛られて
変えられずにいる環境
利他と利己の狭間に揺れ
両端の瀬戸際に脚を架ける
悩みの種は尽きず
今日も何処かで花が咲き
雨嵐は強くなる一方
暗闇で枯れて
落ちていく花がある
その事をいつまで忘れずに
瀬戸際で留まっていられるだろうか
目前の崖っ淵で
【書いた次の日に】
恥ずかしくて恥ずかしくて
型落ちの言葉を組み合わせ
未熟なレプリカを綴り
取り戻せない束の間を享受
立て続けの別れに寂しくても
アヤメが咲く頃に机に向かい
僕はまた性懲りも無く
ペンを手に取り手紙を書くだろう
情けなくて回りくどく
似た話や昔話を繋げて
やっぱり取り戻せないことを
強く痛感して
目に涙浮かべて微笑みながら
書いた次の日に恥ずかしくなる
誰にも言わない駄文を執筆
恥ずかしくて恥ずかしくて
今日も明日も分かっていながら
そんな駄文を書くことを
やめられないでいる
どうしようもなく
書きたくなるような
何かがあるから
【アナーキー】
高架下
自分にとってはもう
実家より身近なコンビニへ
ブラックの缶コーヒー
チョコ味のオールドファッション
おまけの駄菓子を買って
冷たい風に吹かれながら
背中丸めて食べ歩き
屋根のない場所でその日暮らし
でもそれなりに食えている
それだけでも感謝している
そんな自分を誇らしいのか貧しいのか
よくわからなくて
一線引かれたベンチに座り
人の流れを眺めている
晴れている時は人が可哀想に見えて
雨の時は自分が情けなく見えて
転々と飽きのない情報の中
渇望するイメージは沸き立つだけ
明日は紐解けた自分が
アナーキーな場所を過去にして
夜を照らす街灯は変わりなく
その横で今日の役目を
果たしている自分を夢に見ながら
そっとベンチに横たわる
【捨てられるまで】
痛烈に響き渡る世相と死相
拾い上げた他人事を
有象無象の彼方へ放っていく
過ぎた季節のイルミネーション
誰も着目することなく
今日の光をせせら笑う
脱ぎ散らかした服の山
つけっぱなしの部屋の電気
そんな所に自分の心が現れて
肥大化した諦めのサイクルヒット
甘いお菓子でも頬張り
信用してる有名人に縋り
自分をクシャクシャに
最優先は今持つイメージに
最大級のデコレーション
面倒臭いことは取っ払い
副作用の起きるその日まで
今見える群像劇をエンジョイ
放物線を残して
星になるまで
透明色の心を保ちながら
その体に色を塗られていく
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最後まで読んでくれてありがとう。
他の詩のようなものもぜひ。
水宮 青