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【詩のようなもの6編】5月の浮雲

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【5月の浮雲】

5月の浮雲と共に泳ぐ
鯉のぼりと屋根の下
まばらに飛び交う解釈の違い
笑えない提言と狂言

裸になりたくなるような
固められた様式を纏いながら
窒息しそうな5月を泳ぐ

誰の願いも同じ
そう思いたいところだけど
そう思えない明瞭度の暗さ
夜を笑う人と鰻上りの時の人

捨てざる得なかった青春を
嘆き悲しむ人もいる中
僕は思ったよりも平穏な心で
今日を眺め流されている

5月の空は去年と変わらず
それでも何かが更に暗く
埋没する優しい言葉

5月の浮雲と共に泳ぐ
網、呑舟の魚を漏らし
開いた口が塞がらず解釈の違い
言うだけ野暮の進言と一家言

別人を演じられるような
使い古した構文を纏いながら
沈められた5月を泳ぐ

【low421】

春の麗かさと朗らかさに
昨日まで活躍してた炬燵が
場違いなインテリアに

大変結構な今日の暖かさ
夏と勘違いして
低かったテンションがお祭りムード

カチカチだった財布の紐は緩み
漂ってた閉塞感に陽が燦々
その裏で台風の目 人の流れ
浮雲と共に易きに流れる

低い低い声は相変わらず届かず
悲しい話題は相変わらず癒されず
街の暑さにそっとネガティブオプション

次の手を繋ぐ選択と集中
数少ない取り柄の手札
切り札だったものは
縛られたルールの中で意味を変え
低い数字から切られていく

春は今日をローディング

【消臭】

消臭された故郷
郷愁に浸る術を失い
暗い将来が繊細に光る

郷土愛を歌ったところで
破壊されていく景色を
新鮮に感じてしまい
昨日の匂いが遠い昔

美味しかったあの店
美しかったあの場所
自分の中だけで化石になる

軒並み暮らしがぼやけて
しれっと渇いた瞳は
泣くに泣けないまま

言いかけた記憶は
匂いを思い出せず沈澱して
不意に涙とは違う形の哀愁
消臭は続いてむず痒くなる

【侘び寂び】

目新しいものに靡き移り
ひた隠しした甲斐もなく
サラッと過去に置いてかれる
時代の産物と礼節

新鮮な琴線に身は震え
遠い昔話も鮮度だけは持続

サビだけ残して割愛しながら
咲き頃の花に華を持たせ
余白を重じる侘び寂びに手を振る

善悪のつかない前頭葉が
そっとそっと小さくなりながら
誰の為でも物でもない侘び寂び
濁っても透き通っても
今日の流れを汲んで
小さな芽へ

「サヨナラ」とは言わずに
覚えたての言葉で別れを告げ
自分で自分に天晴れ!
講釈垂れる君に幸あれ!
明日に花咲かせ

【仇】

貸したものが返って来ず
無形の仇になって現れる

食欲も性欲も睡眠欲も
怠れば何故か生き辛く
昨日の自分を仇討ちしたくなる
したくなるだけ

無謀な賭け 辛口な酒
頼るアテもなく近づく期限
催促に縮む心臓
言い訳の嘘が仇となり

言葉の品数は足りず
不文律から外れた愚行に
身を任せ関わったものから
損をしていく仕組み

広がるイメージは死人に口なし
誰も折り合いを付けられず
地獄に響く罵倒だけ木霊して
明日を生きる意味さえ見失う

貸したものが返って来ず
無形の仇になって現れて
誰も得をしない仇討ちは
終わりを知らず...

【ペン先】

付けたインクが零れて
思ってもいない形で改変
だけど結果は良くも悪くも
微妙な評価

嬉しいような悲しいような
書いても描いても
昇華仕切れないこの心
なのに消化されていくペン先

無駄遣い無駄遣いと言われ
そんなの自分でもわかってて

この心を誰かに見せる必要が
どこにもないことは
他の誰でもなく昇華仕切れない
この形に表れてる

だけど
ペンを握りインクを付ければ
思ってもみない何かが現れる
そのワクワクが
今をやり過ごす為の暇つぶし

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最後まで読んでくれてありがとう。

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水宮 青