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【詩のようなもの6編】散策した末に
【散策した末に】
すくめた肩の荷は少し減り
緩やかな歩調と共に
友達や恋人の顔が浮かぶ
...なんてそんなわけもなく
現実逃避の末に生まれた安らぎ
生活の猛省で勇み足
うそぶいたところで
バレバレの美辞麗句が並び
一通りの生活苦を味わって
逃げるための散策へ
時代のせいにしても
変わらない自分の気持ちが
挙動不審の視線に表れて
2秒前の景色を思い出せず
早歩きで詰める思考回路
緑色に囲まれた遊歩道
木漏れ日はぼやけた瞳からは
緑色の水玉模様に見えて
最後まで散策した末に
一瞬の宝石を得た気分は
すぐ様いつもの景色へ戻る
【セピア色】
手の皺が増えた頃に思い出す
セピア色に褪せた写真アルバムの存在
歩いた場所止まった場所
ブレたりブレなかったり
加工されたセピアが切なく残っている
身近な人の知らなかったこと
遠い繋がりがあったこと
あなたも若かったこと
僕が今大人になったことで
その全てが残酷に突きつけられて
尻窄みの未来に冷たくなる
広がってしまった寒暖差
併発するやるせなさが
昨日の食事すら心の中で
セピア色に色づいて
大量の花の写真の行く末が
少し前向きに複雑に
アルバムに仕舞われていく
【外れていく】
悔い改めて知らされる
予定通りにいかないこと
卑しく甘い考えが砕かれる
昨日の暮らしから外れること
例えば超過する仕事場
意見の通らない組織
例えば歩き慣れた散歩道
突然の台風の影響による封鎖
虚しさの味がする冷めたシチュー
とりあえず満たされたくて
勢い任せにかき込む
選択肢は選び辛いものが並び
正しいと思うものから外れて
眠くなり丸くなる身体
改めて知らされる
予定通りにいかないこと
甘い考えを信じたくなる
弱い自分が顕著に前に出る
思い通りにならないことだけ
分かってはいるのに
【荒れ地】
曇った空を見に
カーテンの隙間から空想
解明出来ない過程に
意味深長のコメントで集熱
応急処置の冷えピタを貼り
あられもない空論が消える
最後は誰が抱きしめるの
冷め切った瞬間を
間に合わない類推が呼ぶ予熱
想像の及ばない意趣返しが
穴を埋めながら形骸化し
焦げた匂いは飽きられるまで
ずっとこびりついている
【経年】
なんとなく自分に合っていた
この道の上を歩いて馴染み
心が留めていた風景
黒シャツじゃ熱を帯びて
白シャツじゃ汗が滲みて
重ね着した上着で誤魔化し
経年劣化の肌を守る
常日頃の鬱憤は溜めながら
貯まらない貯金箱に呻き
平成の名残りを憂い
経年劣化を謳う
過酷な時の流れが
充分に浸透してしまった頃
頼りのない背中のままだと
自分が一番分かってるから
今じゃもう懐かしい景色に
胸を張って歩けずにいる
無形の思い出に泣き笑い
意味のない競争が好きだった
今はそれら全てが嫌な枷
経年劣化の身体に良く沁みる
なんとなく自分に合っていた
この道の上を歩いて馴染み
心が留めていた風景
【瑣末な日記】
誰にも見せるつもりなく
つけ続けた瑣末な日記
独り言が出鱈目な文節に乗り
自分の事を汚く美しく
紛れない言葉でめかし込む
大風呂敷を広げることもあれば
しょんべんかけても構わない
しょうもない戯言が連なり
泣き事も今は笑えてしまう
引き出しに入っていた秘密も
墓場に持ってく程じゃない秘密も
さりげなく放り込まれてるから
死ぬ前に消去したい側面もある
最期まで誰にも見せるつもりなく
つけ続けた瑣末な日記
独り言が背中を押せるように
自分の事を汚く美しく
紛れない言葉でノートに残る
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最後まで読んでくれてありがとう。
他の詩のようなものもぜひ。
水宮 青