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【詩のようなもの6編】幸運と屍

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【幸運と屍】

月の終わり
誰かの落とした幸運
巡るようにくる自分の番

一喜一憂
上がる心拍数と増える口数
良くも悪くも詭弁が通る

続くはずのない全盛期
高い位置から落ちることが
怖くて仕方ない

屍になりかけた人を巻き込み
偽造された幸運で巣食う

間違いと正しさの混濁
誰も分からないように
そして言い切れないように

屍は皮肉を説きながら
不幸中の幸いを味わい
束の間の暮らし

年の終わり
ゆっくりと都市の終わりを
迎えていく今日の日

気付けない者から
幸運が逃げていく

屍に手を差し伸べられながら

【エデン】

先の無い理想郷への歩みが
シュレッダーにかけられて
夢の切れ端は誰にも見られず
小さいマイホームに帰着する

鍵盤を鳴らして
こじ開けたい部分の鍵を探す
気の向くまま
まだ無垢の部分を

七色の花畑
クリスタルの洞窟
透明な彗星
誰かが今も探している

でも見つかるのは
深い深い水溜りで
溺れてることに気づかず
文明に飲まれた心模様

響く嬌声と不協和音
溶けることない水と油

恐怖と好奇心が混濁
敵と味方の区別も困難
ふとした瞬間喪に服す気分

そんなこんなでエデンの存在を
いつの間にやら狂信している

【Come here】

空白の期間が後ろめたい
でも必要な時間だった

目新しさのない実家
帰ってくる場所なのか
そうじゃないのか
なんとも言い難い場所

生活の仕方が下手な僕
脱ぎかけ食べかけ
挙句に甲斐性無し

僕が君なら選ばない
僕のような人間を

狂ってるフリをして
普通の営みを普通と言う
崩れた明暗

Come here
Come here

言ってみただけ
本当は逆

Take care
Take care

期限付きの輝きで
禍々しく見えるものを
優しく追いかける

【溶解と感慨】

稚拙な戦略が
複雑な悩みを生んでは
最後に頼るのはカミサマ

楽な方へ流されて
目の前の人と視線逸らし
感謝の意がただの社交辞令

しっちゃかめっちゃかの
昨日を溶解していく
そんな風に今日も生きてた

人間味を求めた挙句
崩壊を招くのも個性だと
自己解決で終わってた

何もなく空っぽの今
無責任の軽さが
孤独感を重くしていく

そして気付かされる
昨日までを

じわじわと
溶解された筈の日々が
感慨深く自分の胸に刺さっていく

【落差、寒暖差】

バッテリーは僅か
でもギリギリのその時まで
歩みを止めずにいる
いや止められずにいる

奔放なタスクを抱え
その結果は寒々しい

温もりを求めて
馬鹿な一人遊びを回行

落差ある日常生活が
残りのバッテリーを
消費させるきっかけであり
僕を繋ぎ止める足枷

脳裏に焼き付くシーンは
どれもこれも遠い記憶

例えば机の上に並べられた
お茶菓子を頬張る姿

例えば見たことない花に
1人静かに感動してた時

目の前の現実と
寒暖差ある季節が
意識してない温暖化を
無意識に植え付けて
落差ある光景を目にする

特に何か変わろうと
したわけじゃないのに
落差ある感情が僕の中を
鳥肌立てて蠢いている

バッテリーが切れることを
予感しながら

【宇宙と願い】

マグネットの役割で
侘しさと諦めを引き寄せ
別の角度から夢見心地

「また明日」と言うことが
誰にとっても当たり前
そう言えるならあなたは宇宙

私はそんなあなたを遠く
願いをかける対象なだけ

高らかな好奇心
胸の音が夢を築く

微かな傷を作って
手の届かない願いが
宇宙に向かってた

目の前の現実は変わらず
自分の知らない宇宙は拡がり
かけた願いは憧れを経て
複雑な私が創られていく

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最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青