
【詩のようなもの6編】ブックレット
【ブックレット】
古本屋で見つけたブックレット
特に欲しかったわけではないのに
手にしてそのままレジへ
家で読んでみても
やっぱり特に心は動かなくて
いつしか部屋の片隅へ
時は過ぎて存在すら忘れてた
でも何気なく目にした瞬間
また手にして読み返す
なんとなく憶えてた部分もあった
暮らしも仕事も価値感も
手にした頃と違うはずなのに
やっぱり特に思うこともない
このブックレット
なのに捨てられず
古臭さの中にある何かが
また部屋の片隅に向かう
ずっとそれの繰り返し
付けた覚えの無い汚れが
気づけば増えてきて
忘れてるページも減ってきて
何気ない部分に愛着すら湧く
いつのまにかそんな感じ
最近じゃどこに行くも持ち歩く
僕の中のバイブルになってる
今はそんな感じのブックレット
【傘の下、君の横】
共倒れは御免
でもそうなる際の際までは
一緒に歩いて行けたらと
雨が降る中そう思う
傘の下、君の横
いつまでいられるだろう
傘の下、君の横
いつまでそう思えるだろう
「根源を辿るのは無粋だね」
誰が呟いたか言えないまま
鏡を見るたび忘れていく
破った約束の数を
傘の下、君の横
いつまでいられるだろう
傘の下、君の横
いつまでそう思えるだろう
【読みかけ】
栞を挟んだままの文庫本
最後に読んだのは一ヶ月前
なぜ続きを開かないと聞かれたら
その一番の理由は
目の前の君と向き合えないから
その勇気がないから
文庫本の続きが自分の現実と
リンクして欲しいと願うも
結末が僕と違うのが怖いから
つまりは意気地なしの僕が
君と向き合わない限り
本の続きも開くことはない
肩で風を切るような勇気が
産まれた頃から備わっていたら
今のような有り様にならないのに
いつまでも これからも
越えられない時の壁が
言い出せない内の声を掻き消し
読みかけの文庫本が
いつまでも読めない自分に
「もういいや」って
結末を知ることを放棄して
君から逃げて
話の接ぎ穂になるような
気軽な短編集を探しにいく
【三角関係の人たち】
物語を狂わせる三角関係の人たち
僕は眺めるだけの立場
楽しそうにも辛そうにも見えて
吉と凶を謳歌しているようだ
道を外れたって
人生の糧になってるなら
僕の立場より100倍素晴らしい
僕は少し泣きそうになる
晴れも雨も嵐すら一つの演出
出した答えが大きな渦になっては
時に無常な場面が誰かを巻き込み
ギリギリを踏み込み
何もしない僕と違い
探さなくたって見つかる大人への道
先に先に明日を待ち焦がれていける
角が取れるのもずっと早く
気づけば大事な縁を築いている
気づけばあっけない終わり方で
三角が真っ直ぐな線になってる
【ガムテープガール】
求められる枕詞
派手だけどしっくりくる記号
季節に合わせて
人に合わせて
変幻自在の八面六臂
求められるのは今日まで
明日は分からない
その不安は衝動に駆られる
どこにもない自分自身
そんな風に考えてしまう
自暴自棄っぽさ
それすら周りからは演じてる
そう見えるらしい
理想はないけど現実逃避
誰にも迷惑かけず
私を忘れるために
無造作の部屋にガムテープ
真っ先に目についたから
無意識に任せて
ぐるぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐる
ぐちゃぐちゃに
さしずめ私はガムテープガール
今日からただ一人
私だけのためのガムテープガール
どこからともなく涙...
同時に笑けてくる鏡に写る
今の私
【おとぎ話】
幽霊の正体見たり枯れ尾花
最近は次々と解明されてきた現代
文明は進むのに深まる謎はそのままに
描いた夢より目先の現実
紅蓮と群青が混ざりながら地に足ついて
フィクションとノンフィクションが交ざる
憂鬱を忘れるおとぎ話に心躍る
今が楽しいなら明日にはおとぎ話に
今が悲しいなら明日には人情噺に変えて
互いの話の種にしてしまいたい