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てぃくる 1046 輪郭を解く
梅雨が明けてからというもの、日差しという日差しが熱の角をぎりりと立てて地表をあまねく白く灼き尽くしてきた。時折訪れる雷雨の慰めはほんのわずかで、かつ気まぐれだ。ほぼ一ヶ月近くまとまった降雨に恵まれぬまま、乾き切った地表には事切れた枯れ草が倒れ伏している。
生き物の気配は熱に押しつぶされてひどく薄くなり、濃いのはどこまでも眩い炎光と、それに辛うじて抗った者が落とす黒焦げの影だけだった。
だが。解けてきたのだ。光の束が、徐々に。
輪郭がぼやけ、そこから夏がほつれる。隙間にわずかな風が流れ込む。
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ああ、そうだ。猛暑、酷暑に悩まされた今夏も、滾りの矛を収めて徐々に過ぎ去りつつある。
地表に落ちた陽光が陽炎を作れなくなれば。
火傷を慰めるそよ風にくるぶしが洗われるようになれば。
夏がまた一つ。思い出の中に退いてゆく。
秋立つや万物ゆると流れ初む
(2023-09-02)
Early Autumn by Mezzoforte