今冬、初雪山はしゃざん。
2025.1.12
ふと、社山というお山を見つけた。
社山、と書いて「しゃざん」と読む。 やしろやま、ではなく「しゃざん」。
その響きに一発でやられてしまった。
奥日光中禅寺の男体山と対峙する様に、中禅寺湖を挟んでアッチとコッチの南側にある。
装備は1度で揃えるには予算が厳しいので少しずつ。足回り、昨シーズンはまずアイゼン。とりあえずは3シーズン用の登山靴でしのぐ。少し雪が被ると爪先はやっぱり冷たかった。
今シーズン、いよいよ雪靴を手に入れいざ、勇んで雪山に望む。
冬支度、全てが慣らし運転。
アイゼンを付けて歩くのも今冬初めてだし、靴も下ろしたて。谷川岳なんか行きたいなぁ。などと企んでいたが、昨冬に比べかなり雪が多い感じで躊躇する。
そんな時に、社山を見つけルートを引っ張ってみると、しばらく平坦、平坦、平坦、ドーンと登って下りて、また平坦、平坦、、とメリハリのある高低差。
序盤は、久しぶりの雪に慣れつつ雪の上を歩いて楽しみ、慣れてきた頃にアイゼンで登っていく。帰りもゆるゆる散策がてら雪道を歩いて、、なんて妄想していたけど、ちょっとメリハリが付き過ぎた様だ。
始発に乗って東武日光駅を目指す。この時間はまだ特急電車は走っていなくて、片道3時間、扉が開く度に冷たい風が吹き込んで寒い思いをする。電車を乗り継いで8時過ぎに東武日光駅に到着。
そこから8時半過ぎのバスに乗り継ぎ、バスはいろは坂を駆け上がって9時20分、中禅寺温泉バス停に到着。
久しぶりの日光。日光って何かちょっと誇らしい。ちょっと特別感がある。何年か前に中禅寺湖を左回りに千手ヶ浜までサイクリングしたことがあって、その時も自転車ではなく歩きたいな、と思っていた。
今回は時計回りに、南の湖畔を廻っていく。
大使館の別邸などが立ち並ぶ湖畔は、とてもハイソな余暇地の様でハイシーズンはそんな雰囲気を感じさせるが、雪が積もるこの季節は人影はほとんどない。
前方にひとり、女性のハイカーさんが歩いていたくらい。今回は度々このハイカーさんと行き違うことになる。
湖畔の道を歩く方が長い今回の山歩き。サクサクと雪を踏んで、景色に目をやり、呑気に歩いているのがとても楽しい。
と、ふとちょっとしたところで、思わず足を取られ尻もちをつく。誰も見ていない。気を抜いてはいけない。
空は少しどんよりと、雪がチラチラとしていてるけど、風がなくて、そこまで寒くはない。
メリとハリ。どっちがどっちなのか雰囲気でしか分からないけど、たぶん、ハリの方がやってきた。
阿世潟、あぜがた、という分岐で阿世潟峠へ上がる。いよいよ湖畔を離れる。ここからアイゼンを付けよう。
と、やっているうちに先のハイカーさんが追いついた。足が早いベテランさんな雰囲気。
ここからは短い距離だけど、一気に600m上げる。それなりに心してかかる。阿世潟峠で稜線に乗るとやっぱり風が当たる。先に出たはずなのにまた先のハイカーさんに追いつかれてしまう。早い。看板を見ながら少しおしゃべり。
男体山の山頂はすっぽりと雲隠れしており、その顔を見せてくれない。天候は回復に向かっている様で徐々に空が明るく、男体山の先の奥日光の山々が、南側の山々も澄み切った空気の前に明け透けとその景色を見せてくれる。
稜線歩き。
この辺りに来ると先に登った人と少しずつすれ違う。それでも人はかなり少ない。細い稜線もトレースは人一人分ついていて、外さなければどうということはない。
ぐいぐいと標高を上げるトレース。風の当たる箇所は雪が少なく所々岩や土が顔を出している。歩きにくい。左右に振ることもなく直登で上がっていく。しんどい。足が重い。
いつも右側に中禅寺湖と男体山が見えていて、素晴らしい景色に何度も足が止まる。右も左もいい景色。写真を撮るふりをして休憩している。
先のハイカーさんに抜かれる。
そんな調子でゆるゆると登っては休みして、ハイカーさんの後ろ姿はついに見えなくなってしまう。多分今、一番最後を歩いているに違いない。
なんとか登り切ったところで。社山山頂に到達。三角点らしきものが2つあった。先のハイカーさんが休憩をされている。
男体山ももう少しで雲が取れそうで、片顔を見せ始めている。徐々にお天気が良くなってくる山歩きも珍しい。だいたい、徐々に悪くなるのに。
お写真を撮ってあげたりして、そして先にハイカーさんは出発された。
下り。雲がすっかり晴れて、今度は左に中禅寺湖と男体山を眺めながら下る。アイゼンを履いて土や岩が露呈した下りはちょっと怖い。蹴躓いたら一貫の終わり。気をつける。でも、景色が気になる。前に行った千手ヶ浜はどこかなーと湖を覗き込んでしまう。
無事に下り切って、阿世潟の分岐でアイゼンを外す。軽くなった。まだ先は長いけど、あとは、とぼとぼと、しみじみと帰るだけ。空はすっかり澄み渡って、風も弱く、男体山が中禅寺湖に映し出されている。逆さ男体山だ。日暮れが近い中禅寺湖のほとりを1人歩いている。スルッと滑りそうになりながら。
15時半、中禅寺温泉のバス停に到着。
中禅寺温泉のバス停に戻ってきた時には上手いこと帰りのバスが滑り込んできた。靴を履き替えたりしたいところだったけど、見逃すのも時間がもったいないのでそのまま乗り込んで、バス内で帰りの準備を整える。
そんなバスはいろは坂に入り、カーブを巧みに下っていく。下向いて整理したり、帰りの特急の手配をスマホでこちょこちょやっているうちにグロッキーに入ってしまう。うぅ・きも・・しばらく目を瞑って寝たふりをして回復を目指す。
このカーブが最後です。という運転手のアナウンスにほっとする。
東武日光駅に着いて、目星をつけていた駅前のレストランに吸い込まれる。ビール、ビール、餃子、チキンカツ定食を平らげて電車の時間。一番後方の1人シート仕様の席が取れていた。これはラッキーとすぐに寝てしまう。。。
無事に終えることができた今冬最初の雪山歩き。距離14.4km、上り下り800mとなかなか歩きました。次の日は身体中がくたくたで久しぶりの筋肉痛に悶える。それがいい。
冬の日光は人も少なく、シンとした空気と景色と、この日は風も穏やかでその景色を存分に味わえた1日でした。