プロダクトマネージャーと進行管理

進行管理はプロダクトマネージャーの重要な仕事の一つだ。

開発プロジェクトは様々な人の共同作業によって進む。進行管理とは、プロジェクトに関わる人たちの作業計画を決め、作業の進行状況を把握し、計画通りに物事が進むように調整することである。進行管理に失敗すれば、いかに優れたコンセプトのプロダクトであっても開発は頓挫する。

では進行管理を円滑にすすめるにはどうすればよいか。個人的な経験則だが、5つのポイントを紹介する。

1.プロジェクトの完了日を先に設定すること
最終期日を最初に決める。各作業担当者の時間見積もりをつみあげて計画を作らないほうが良い。各作業担当者は作業要件が未確定な状態でバッファを見込んだ作業工数を提示する。それを積み上げていくとトータルの作業期間が膨れ上がってしまう。まずは、プロジェクトの完了予定日から逆算して各タスクの完了日を設定する。
タスクの納期が厳しすぎて現実的ではない、ということがわかったならば、その時改めて最終期日を再設定する。

品質、コスト、納期はトレードオフの関係にある。そこでまず納期を固定化し、その制約のなかで品質(≒要件)を考える。
品質の追求は際限なく可能だ。時間の制約がなければ、100%の品質を求めていくらでも時間を費やすことができる。納期の制約があるからこそ、品質に対する要件が明確になる。
もちろんこれはスケジュール作成プロセスの話で、見積もりを無視した期日設定をしてステークホルダーにコミットするのは絶対に避けるべきだ。

2.期日は具体的に決めること
不確定要素が多いプロジェクト開始初期フェーズであっても、可能な限りターゲット日をピンポイントで決める。中旬、4日の週、といったような幅のある期日指定をしない。中旬とは「11日から20日までの10日間」という意味だ。数年かけて完成させるようなプロジェクトなら10日間のブレは誤差の範囲かもしれないが、3ヶ月で結果を出さなければならないプロジェクトの場合は10日のブレは大きすぎる。「9月12日」など日付を具体的に決めること。期日が曖昧だと人は動かない。タスクの各担当者は、締め切りが不明確だと自分の仕事の優先順位を決めづらい。

3.「スケジュールを決める日」を決めること
不確定要素が多すぎて期日を具体的に決められない、決めることに意味があると思えない、という言うことであれば、期日を決める日を決めよう。不確定要素というものはいつまでたっても完全にゼロにはならないものだ。完全に情報が集まってから作業計画を作ろうとすると、いつまでたっても日程が決まらない。スケジュールが決まっていない、という状態は関係者を最も不安にさせる。

4.関係者のスケジュールを先に押さえること
プロジェクトのキックオフや、経営向けのレビューなどの予定は先に押さえてしまうこと。プロジェクトの関係者が多いと日程調整が難しい。経営陣の予定を押さえるのはもっと難しい。予定を押さえたあとにどうしても準備が間に合わないことがわかったら、その時はリスケしてしまえばいい。リスケが度重なると信用を失うが、「レビューの予定が押さえられなくてプロジェクトを進められなかった」などといった事態を招くほうが、よっぽどプロジェクト責任者としての評価を下げる。

5.進捗を確認すること
タスク洗い出して担当と期日を決めたら、定期的にタスクの進捗状況を確認すること。「不明点があってタスクが進められなかった」という報告を締め切り前日にされてもリカバーできない。
プロジェクトメンバーごとにコミットメントに差がある。それは単にやる気の問題でない。例えば複数のプロジェクトを兼任しているメンバーは、物理的に時間が不足して期日を守れないこともある。タスクは予定通り完了しそうか、ブロッカーはないか、定例ミーティングで確認する。定例ミーティングはプロジェクトが軌道に乗るまでは毎日開催しても良い。その代わり短時間で終わるようにファシリテーションしよう。できれば15分、せいぜい30分で終わるようにすれば参加メンバーの負担も少ない。朝会や夕会を開催しよう。


以上、進行管理を円滑にすすめる5つのポイントを紹介した。
ベーシックなことなのでプロジェクト管理の本を読んでもこの粒度ではHowが書かれていないことが多い。もし周囲の期待どおりにプロジェクトを進められない、と感じていたら一度試してみてほしい。

お知らせ
プロダクトマネジメントに関する入門書を書きました。これからPMになる人、これからプロダクト開発に関わる人はぜひご覧ください。

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