日曜美術館を見て(2023.7.16)
今回のテーマは女性洋画家の三岸節子と長谷川春子。
女性洋画家が認められなかった時代に生き、さらに戦争に大きな影響を受けた二人。しかし、二人の生き方には大きな違いがあった。
節子は両親の反対を押しきって画家になった。一方、姉の勧めで絵を学び、パリへ留学した春子。
それでも、女性洋画家の地位向上を目指すという点で二人は結びつき、親友となる。
戦争が始まると春子はこれを女性画家の立場向上に利用しようと考え、団体を作る。節子も最初は参加するが、途中で団体を離れる。春子は節子を大勢の仲間のいる前で「非国民」と呼び、二人は仲違いしてしまう。
しかし、戦争が終わると春子は戦犯扱いされ、洋画家という立場を捨てる。戦争を利用しようとして、逆に戦争に利用されてしまったことに気づいたのだろう。女性洋画家の地位向上に力を注いでいた春子にとってはショックも大きかっただろうことを思うとやりきれない気持ちになる。
最後に源氏物語を題材に大作を仕上げたのは、やはり画家として最期を迎えたいという春子の強い思いがあったに違いない。
戦後、節子はパリへ留学する。一方的に仲違いされながらも、春子の意志を引き継ごうという強い意志が感じられる。春子の葬式に女性画家はほとんど参列しなかったが、節子だけは葬儀に参列したと言う。袂は別れたが春子を尊敬していたのがわかる。
最後に、節子の絵2作品について。
『自画像』を見て、まず注目するのはその虚ろな目だ。何を見てるのかわからないと番組でも言っていたが、女性画家としてのハンデを乗り越えた遠い未来を見つめているのかもしれない。
「さいたさいたさくらがさいた」は節子最後の作品。93歳で描いたとは思えない生命力溢れる絵だ。自分の歩んできた道は間違いなかったという自信が感じられる。
今回、二人の名前は恥ずかしながら初めて知った。絵画の歴史を知ることも美術鑑賞のひとつだとわかった。