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Photo by
kuzu_yu
ロウアー物語 2025.2.23
<プロローグ> ―4―
サリーはバケツに貯まった乳の量を確かめて、ロウアーのやや固い乳房から手を離した。
「朝の分はこれくらいで大丈夫。ありがとう、ガーティ」
それを聞くと、乳房を差し出していたロウアーは家畜舎のベッドに戻り、もう一人のメスのロウアー、エリーと何やらおしゃべりを始めた。
「エリー、午後は頼むわね」
サリーの言葉にエリーは笑顔でうなずいた。
乳の入ったバケツを持ち、サリーは家畜舎を出た。太陽はすでに顔を出している。今日も一日晴れそうだ。小麦畑の色鮮やかな緑色が、風になびきながら地平線まで続く。三人のオスのロウアーたちが雑草を刈っているのが見える。サリーのブロンドの長い髪が朝露を含んだ夏風に揺れた。サリーはバケツを地面に置き、空を見上げた。青空に向かって両腕をいっぱいに伸ばし、早朝のまだ冷たさの残る空気を胸いっぱいに吸い込む。体中の細胞が一気に目を覚ました気分になる。サリーはバケツを手に取り、敷地内にある自宅へと向かった。