
ロウアー物語 2025.2.28
<第1章> NALPA(北アメリカ国ロウアー人権保護協会) ―3―
ネイサンはロウアーの人権活動に力を注いでいた。しかし、リベラル派の多いテキサス州でさえ、ロウアーを擁護するアドバンストは少数派であり、ネイサンのロウアー人権獲得運動は世間から無視され、盛り上がりは期待できない状況だった。
「やあ、ネイサン。食事は終わったかい?」
約束の時間ちょうどに、アンディ・ウィリアムズが部屋に入ってきた。
アンディはネイサンよりふたつ年下だったが、学生時代からの親友で、今は同業者でもある。ネイサンはアンディにロウアーの人権獲得運動に協力を仰ぎ、アンディもすぐそれに賛同した。
「ああ、アンディ。食事はとっくに済ませたよ。さあ、こっちに座って」
アンディがソファに座るのを見計らったように、ドリーがお茶を三つ持ってきた。ネイサンはドリーを自分の隣に座らせた。
「ドリーにも打合せに参加してもらおうと思っている。これから協会を立ち上げるとなると、いろいろ力を借りなければいけないからね」
「それはいい」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。ドリーに入ってもらえるなら、こっちだって心強いよ」
アンディが笑顔で答えた。
「それじゃあ、さっそく本題に入ろう。今日は、ロウアーのための協会を立ち上げるために集まってもらった」
ネイサンがキーボードを叩くと、スクリーンパネルに文字が映し出された。
「協会の名前は『北アメリカ国ロウアー人権保護協会(NorthーAmerican Lower―personalrigt ProtectionAssociation)』、通称はNALPA(ナルパ)としたい」
「いいんじゃないか、ネイサン」
「まずは北アメリカ国で活動を開始して、将来は世界に活動の場を広げていきたい。事務所の所在地はとりあえずここにしようと思っている」
「賛成だね。今は三人しかいないんだから、ここで充分だよ。協会員が増えれば、そのときもっと広い事務所を探せばいいさ」