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ロウアー物語 2025.2.27

<第1章> NALPA(北アメリカ国ロウアー人権保護協会) ―2―

オースティンは北アメリカ国南部、テキサス州の州都であり、ヒューストンやダラスより人口は少ないが、テキサス州の中南部に位置する大都市に変わりはなかった。東西をコロラド川が流れ、川はメキシコ湾に達している。南部でありながらも、昔からリベラル気質の土地柄で知られていた。
オースティンの西側のオフィス街にウエスト法律事務所はあった。

「本日のスケジュールを報告します」
ドリーはスーツの内ポケットから折りたたみ式タブレットを取り出し、スケジュール帳を開いた。
「本日十二時三〇分から協会立ち上げの打ち合わせにウィリアムズ弁護士がお越しになります。十四時にブライアン様がロウアー売買問題で、十五時にシンプソン様が財産分与の件で、十六時にスナイダー様が顧客とのトラブルの相談にお見えになります。十九時には再びウィリアムズ弁護士とディナーの予定が入っています」
「ありがとう、ドリー。書類にはもう目を通しておいたよ。そうだ、ディナーには君も来られるんだろう?」
「ええ、参加いたします」
「よろしく。僕はアンディが来るまでメールに目を通しておくよ」
ドリーは部屋を出る前に、振り向いて尋ねた。
「ランチはウィリアムズ弁護士とご一緒されますか? それならば、いつもの店を予約しておきますけど」
「いや、昼は軽く済ませるよ。アンディとは夜に食事するのだから、昼まで一緒の必要はないだろう」
「わかりました。それではサンドイッチでも届けさせましょうか?」
「ああ、そうしてもらえるとありがたい。濃くて熱いコーヒーも頼んでおいてくれ」
「わかりました。では」
ドリーが部屋を出たとき、ネイサンはすでにパソコンのキーボードを叩いていた。

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