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税理士の決断は?(超短編小説)

「旅行代売上っていうのが売上のほとんどを占めているんだけど、この旅行代売上って何だね。うちの会社は旅行代理店なんてやってないじゃないか」
「うちは元々これが商売を始めるきっかけで、今でもうちの会社の利益に大きく貢献してくれてます」
「中身はなんだね?」
「税理士先生なんだから説明しなきゃいけないですね。先生はうちの会社の税理士報酬が高いと思いませんか?」
「もちろん。桁違いに高いことはわかっているよ。でも顧問になった理由は他にもある。この会社は上下関係がしっかりしていて統率力がある」
「ありがとうございます。顧問料が高いのはこの旅行代売上のおかげなんです。社内では呼び名が違うんですがね」
「なんだね、それは?」
「うちの若い奴らはトリップ代って呼んでるんですよ」
「トリップ代?」
「ええ、うちは製薬会社ですよね。実はいわゆるヤクを売っているわけです。お客様はみんなトリップするってわけですよ」
「それは違法行為じゃないか」
「はい、そのとおりです。で、先生はどうしますか? このままうちで税理士として働きますか? それともうちのお客様になりますか?」
そのとき、腕っぷしの太い頑強な二人の男が、注射器を手に部屋に入ってきた。

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